『地球移動作戦』の秘密

『地球移動作戦』については他にもいろんな秘密がある。この小説が東宝映画『妖星ゴラス』のオマージュであることはみんな知っているだろうけども、他にも『ゴラス』ネタが山のように詰め込まれているのだ。

 たとえば前半のシドニー空港から飛び立ったVTOL機。「漢字の『木』に似ている」と描写されたいるが、実は『ゴラス』に出てくるVTOL機をイメージしている。ミニチュアは後に科学特捜隊のビートルに転用されている。

 その旅客機の中で風祭良輔が読んでいる雑誌の記事。「南極の氷が融けて眠っていた恐竜が復活するというマンガ」が載っているというのは、もちろん『ゴラス』のマグマのこと。

 そして旅客機の中で良輔が会話する老人。「なかなか世の中、計算通りにはいかないものですよ」というのも『妖星ゴラス』の台詞。

 その後のシーンでも「秘密はいかん」「公開すべきだ」というネタをこまめに拾っている。

 さらに中盤のシーンでも、シリンクスと魅波のベッドシーンの後で(二人とも女性である)、指輪を放り出すシーンを入れた。これも『ゴラス』の名場面だよね。二人を女性にしたのは単なる僕の趣味(笑)。

 そしてまた、こんな台詞も。「君たちが宇宙のどこかで生き残って、私たちは地球といっしょにお陀仏かもしれない。だろ?」

 これSFマガジン連載中に書いたら、編集部からチェックが入ったんだよね。ジェノアが「お陀仏」というなんて言葉を使うなんておかしいと。でもしょうがないじゃん。『妖星ゴラス』の名セリフそのままなんだから。

 そうだ、『シュテルンシフリート』について書くのを忘れていた。ここは『パンツァーリート』(第二次世界大戦中に作られたドイツ陸軍の歌。『バルジ大作戦』でも使われた)の替え歌なんだけど、自分ではのって書いてみた。本当はドイツ語にしたかったんだけど僕の語学力では無理だった(笑)。でも自分でもかっこいい歌だと思います。「夜を翔け、しじま裂いて、悠久の闇、叡智で照らす」最近もお風呂で歌ってる。