『アイの物語』の秘密

 これまでいろんな秘密を書いてきた。今日は『アイの物語』の秘密公開だ。とりあえず僕の小説にはオタク・ネタが多いということはみなさんご存知だろうかと思いますが……この小説にも特撮ネタが多いんである。

 たとえばTAIロボ・バトルのアンドロイド・アイビスの創造者、影山秀夫はハンドルネームは「歯車帝国」は『超電子バイオマン』の新帝国ギア。

 アイビスのライバルであるレイブンの創造者・案納光雄は『人造人間キカイダー』のハカイダー

 ペテン師ウルフのマスターは『大鉄人17』のハスラー教授、すなわち大月ウルフ

 信濃のマスターのさおりは『ロボット刑事』。

 パイ・クォークのマスターの黒いペガサスは『鉄腕アトム』の天馬博士(これだけがアニメだ)。

 その他にもTAIの使う変な言葉もいろいろ考えた。「では、コロサスで行くか」というのは『地球爆破作戦』という実写SF映画より。人間より進化したコンピューター「コロサス」が人間を支配してゆくという怖い映画。「いっそディッシュで行ったら?」というのはトマス・M・ディッシュの『人類皆殺し』という小説。それは「クリフなジョークはよせ」と止められるわけだ(笑)。

 アイビスは語り手の少年といっしょに自分たちの街を歩きながら、ホクトというロボットと会話する。ホクトは「その男性または女性は五十度で叩かないだろうね?」と質問する。それは『ドラえもん』のギャグで本来は六十度なんだけど。さらにホクトは「世界の下のトンネルだからしかたがないが」と言う。これはフレデリック・ポールの「幻影の街」という作品の原題である。それは世界の下のトンネルをめぐる小説だ。

 こんな風に『アイの物語』という小説はいろんな意味が隠されている。たぶん僕以外の人が読んでも、がらっと意味が違ってしまうのではないか。それでもいいのである。この小説の意味は「わからない」というところにあると思っている。たとえわからなくても、読んだ人が楽しければいいのだ。