8月18日(月)ビーム砲の内側を見学

 コミケの翌日は東海村にあるJ−PARC見学ツアーに参加。

 J−PARCとは、

Japan

Proton

Accelerator

Reserch

Complex

 の略。とにかくものすごくでかい陽子加速器があるのだ。

 まず330mのリニアック(直線加速器)。

 次に円周350mの3GeVシンクロトロン。

 最後は円周1.6kmの50GeVシンクロトロン(内側に甲子園球場が5個入る広さ)。

 この3段で陽子を加速するわけだ。

 現在、建設中のニュートリノ実験施設も見せてもらった。光速近くまで加速した陽子を、グラファイトの棒にぶつけてニュートリノを発生させるのだ。

 特に印象的だったのは、25mの地下にあるビームの通り道、ディケイボリューム。建設中でエレベーターが付いてなかったりするもんで、コンクリートむきだしの階段を5〜6階分ぐらい上り下りしなくちゃならず、さすがに足がへばったが、その価値はあった。

 案内してくださった多田先生は「ビーム砲の砲口」と称してたけど、まさにそんな感じ。波動砲の内側を思わせる、金属と冷却パイプで覆われた長いトンネルが、地中を94メートルも一直線に貫いているのだ。完成したら、ここを毎秒1000兆個のニュートリノ・ビームが飛んでゆくわけである。目には見えないけど。

 僕らは砲口の方から入ったんだけど、奥(ニュートリノの発生装置)に向かうにつれてトンネルが小さくなってゆくもんで、『ドラえもん』のガリバー・トンネルのようでもある。

 ビーム砲の前にはグラファイトでできたビームダンプと呼ばれる遮蔽体があり、ニュートリノ以外の粒子はここで止められる。

 ニュートリノ・ビームが飛んでゆく先にあるのは、295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にあるスーパーカミオカンデ

 ニュートリノは透過性がきわめて高いので、地中を295km貫通するぐらいはたやすい。それをスーパーカミオカンデで捕らえようという壮大な実験なのだ。

 ビームのさらに先は日本海を貫いて韓国にまで達してるんだそうで、韓国では日本の実験に便乗したニュートリノ実験を計画しているとか(笑)。

 他にも、中性子を利用した物質・生命科学実験施設なども見学。

 ずらりと並ぶコイルやら、でかいクレーンやら、よく分からない銀ピカのメカやら、液体窒素のタンクやら、とにかくかっこいいものばかり。いやあ、いいなあ。来て良かったなあ。

 小説の参考になりそうなネタもいろいろ。多田先生に「『MM9』の続編でここ壊してもいいですか?」と言うと、「どうぞどうぞ」という返事。

 海が間近にあるから、怪獣が上陸するのに絶好のロケーションである。陽子加速器はもちろん、大量にある液体窒素とか液体ヘリウムなんかも、話の中で使えそう。

 一方、小説のネタにならないのが、多田先生ご自身。

 金髪で、いつも迷彩服を着て、腰の周りに工具をじゃらじゃらぶら提げてる、インパクトのある人。これでも理学博士で「素粒子物理学研究所 物理第三研究系 ニュートリノグループ」の偉い人なんである。施設の設計なんかもやってるそうな。普段はつくばの方に住んでるんだけど、週末にはつくばエキスプレス秋葉原に繰り出すのだ。

 こんなキャラ、小説に出したって、「こんな科学者がいるわけない」「リアリティがない」って言われるよ!

「事実は小説より奇なり」と言うが、小説における「リアル」とは何なのかと、深く考えさせられましたわ。