『電人ザボーガー』と『キャプテン・アメリカ』

 長いことブログを放り出していて申し訳ない。今月は前半が死ぬほど忙しかったのである。

 昨日、ちょっと時間に余裕ができたので、梅田でレトロなヒーロー映画を2本続けて見てきた。

電人ザボーガー』は観客を選ぶ映画だなあ。僕はけっこう楽しんだけど、「何だ、これは!?」と怒る人も多そう。

 まあ、僕も意図的なギャグ(それもしょーもないやつ)が随所に入ってるのが、ちょっと嫌だった。「大男による辱め」とか「オナラでロケット噴射」とか。笑えるんじゃなく、逆に引いてしまう。ギャグが出てくるたびに現実に引き戻される感じがして、映画に没頭できないのである。

 単に監督がしょーもないギャグが好きな人なのか、それとも「真剣にやってるんじゃありませんよ。ふざけてますよ」というサインを発してるのか。後者だとしたら余計なお世話である。『ザボーガー』ってだけで最初からマジじゃないのは分かってますから(笑)。 つーか、『ザボーガー』はそのまんまやるだけで笑えるから!

 ギャグなんか入れなくても、むしろ徹底して大真面目にやった方が、心の底から笑えたと思うんだがなあ。『Gガンダム』とか『プリンセス・ナイン』みたいに。

 でも、いい場面がいろいろあるんだよ。

 アバンの後で主題歌とともに展開されるOPのアクションが、ダサいのに猛烈にかっこいいの。ダサかっこいい。「飛竜っ三っ段っ蹴りっ!」という掛け声にすごく力が入ってる。

 最終決戦に向かうためにマシーンストロングザボーガーが疾走するシーンで、子門真人版の主題歌が流れたのにも大感激。

 クライマックス、ザボーガーとブラックホークが人型→バイク→人型とめまぐるしく変形しながら戦うカットなんか、ちょ〜かっこいい。

 ウォシャウスキーの『スピードレーサー』(マッハGOGOGO)とかがOKな人なら、この映画もOKのはず。

 それだけに「ギャグは要らんかったなあ」と思えるのである。

 EDでは旧作のダイジェスト映像が流れるんだけど、「ニコニコ団の恥ずかしいピンクのユニフォーム」「ブル・ガンダーのものすごく目立つ弱点」「巨大ロボの体を垂直に駆け上がるザボーガー」などのシーンが、ちゃんと原典通りだったのには、あきれるやら感心するやら。

 しかし、ブル・ガンダーとかは旧作のまんまなのに、ジャンボメカがああなるとは思ってもみなかったなあ……などと『MM9』書いた人間が言っちゃいかんか(^^;)。

キャプテン・アメリカ』も良かった。元々、第二次世界大戦中(アメリカが参戦する前の1940年)に生まれた国粋主義的ヒーローなんだけど、その胡散臭い出自を逆手に取って、いい話に仕上げている。

 まず、キャプテン・アメリカになる前のスティーブ・ロジャースがじっくり描かれている。肉体はひ弱だけど、心優しく、正義感は人一倍の純粋な青年。「ナチを殺したいか」と問われ、「本当は人殺しなんかしたくない」と答える。その善良さこそが、超人兵士としての資質なのだと語られる。

 また、超人兵士となった直後のスティーブは、前線で戦ったりなんかしなくて、戦時国債を買うキャンペーンのキャラクターとして利用される。舞台の上でヒトラーをノックアウトしてみせたり、映画に出演したり。

 分かる人なら分かるけど、「ヒトラーをノックアウト」という絵は、1940年の『キャプテン・アメリカ』創刊号の表紙なんである。つまりこの映画では、1940年代のコミックスは、戦意高揚のために創られたフィクションとして位置づけられているのだ。

 あの派手な青いコスチュームも、元は舞台の上で着ていたもの。キャプテン・アメリカは最初、架空のキャラクターにすぎなかったわけだ。

 しかし、前線を慰問に訪れたスティーブは、戦争の現実を目にし、さらに親友が敵に囚われたことを知って、架空のキャラクターであることに嫌気が差し、本物の戦場に身を投じることを決意する。

 しかも戦う相手はナチそのものではなく、レッド・スカル率いるヒドラだ(レッド・スカルは途中でヒトラーと袂を分かつ)。ドイツ人全体を悪者にしないための配慮だろう。

 このあたりの、観客に嫌悪感を抱かせないための気配りの数々、本当に上手い。

 当然、スーパー・ヒーロー映画だから、派手なアクション・シーンもぎっしり。

 ヒドラは現代科学をも上回る超テクノロジー兵器を有している。あのハワード・スターク(トニー・スターク=アイアンマンの父親)に「どうやって動いてるのか分からない」と言わしめるほど。そのハワードも、すでに反重力装置を開発してたりするんである。この映画版では、もしかしてS.H.I.E.L.Dの空中母艦とかもハワードの技術を使ってるとかいう設定なのかな?

 しかし、ニューヨーク万博で新発明をプレゼンするハワードの言動が、息子そっくりなのには笑った。

 笑ったといえば、レッド・スカルが逃亡する際に使ったメカにも爆笑した。トリープフリューゲルだよ! すごいよ! 映像作品にトリープフリューゲルが出たのって、これが初めてじゃないか? この映画のリアリティ・レベルにぴったり合ってて、良い選択だ。

 クライマックスに登場する巨大全翼機も素敵。ホルテンのHo229やH VIIIあたりをごちゃ混ぜにした感じの、これまた「分かってる」デザインなんである。 珍兵器好きの人間には感涙もの。

電人ザボーガー』は笑って許せる人にしかおすすめできないけど、『キャプテン・アメリカ』は万人におすすめできる。