『翼を持つ少女 BISビブリオバトル部』

 東京創元社 2052円

 12月22日発売

 中高一貫国際学園BISに通う埋火武人(うずみびたけと)は、ある日、図書館で同級生の伏木空(ふしきそら)とばったり出会う。

 空はSFが大好きな少女。SFの話をはじめると止まらない。

 武人の亡くなった祖父はSFマニアだった。彼の遺した膨大な蔵書に魅了される空。しかし武人はノンフィクションしか読まず、SFを毛嫌いしている。

 武人は空をビブリオバトル部に勧誘する。初めてビブリオバトルを観戦する空。BISビブリオバトル部には、部長の聡(さとる)をはじめ、理系のクールな美少女・明日香(あすか)、腐女子のミーナ、かわいいものが大好きな少年・銀(ぎん)など、それぞれに本を愛する個性豊かな面々が揃っていた……。

 キャッチコピーは「日本初の本格的ビブリオバトル青春小説!」。日本初じゃなく世界初じゃないかと思ってるんですが。

 きっかけは去年のSF大会で「子供たちにSF本を」というパネルディスカッションを見たことでした。

SF大会レポート2:SF大会で新作のアイデア浮かんだ

http://hirorin.otaden.jp/e284093.html

 どうすればSFを知らない若い世代にSFの面白さを伝えられるのだろうか……と考えていた時、このパネルの中でビブリオバトルの話題が出てきたもので、「これだ!」とひらめいたわけです。SFが大好きな少女を主人公にしてビブリオバトルをやらせようと。

 しかも、考えてみれば、べつにSFに限定することはないんですよ。各キャラクターごとに得意分野があることにすれば、ノンフィクションだろうと科学本だろうと図鑑だろうとマンガだろうとライトノベルだろうと、本なら何でも取り上げられる。本を読むことの楽しさを伝えられる。

 と学会ではずっと、ひどい内容の本ばかり紹介してきたわけですが(笑)、逆に面白い本ばかりを紹介するのもいいんじゃないかと思いついたわけです。

 作中に登場する本はすべて実在のもの。世界の名作とかベストセラーとかではなく、(一部を除いては)ややマイナーな本が多いです。本好きの読者でさえ「そんな本あるんだ!?」と驚くような本をセレクトしました。

 もちろん、ただ本を紹介するだけでは小説にはなりません。「ドラマを盛り上げる」」「バトルを熱くする」という点に全力を注ぎました。

 特に苦労したのはビブリオバトルのシーン。バトルといっても物理的に戦ってはいないわけですが、それでも熱く見えなきゃいけない。どんな本を登場させるかはもちろん、誰がどの順番で紹介するか、どういうアピールをするか、各キャラクターがその本にかけた想い、そして誰に勝たせるか……と、バトルの手順を組み立てるのが、毎回、書いていて悩ましいし、楽しいんです。

 あと、青春小説なんで、もちろん恋も出てきます。特に空と武人の関係。1巻では、すでにお互いに意識し合ってるのに、表面上はぶつかり合ってる……というライトノベル的王道展開が、書いてて楽しいんですよね。2巻以降は、明日香や銀など、他の部員にもスポットを当ててゆく予定です。

 本好きの方ならおおいに共感していただけるでしょうし、本をあまり読まない方も、この機会に本を好きになっていただけると期待しています。