「簡素化」してはいけないこともある。

 長いことネットやってて、あんまり電気製品とかの悪口なんて書いたことがないんだけど、今回ばかりはあまりにひどくて腹が立ったので実名で書かせてもらう。

 パナソニックのブルーレイレコーダー

 DIGA DMR-BRT210

 仕事場で今使ってるデッキが調子が悪くなってきてたんで、そろそろ買い替え時かと思っていたら、店頭でこれを見かけた。10月に発売されたばかりの新しい機種で、しかも安かったので買ってみた。

 購入したのは去年の11月だけど、仕事が忙しかったのと、古いハードディスクの中にたまっていた大量の番組をDVDに落とすのに時間がかかったもんで、3日前、ようやく接続作業に取りかかれた。

 ところが、大きな問題にぶち当たった。

 地上波デジタルは何の問題もなく映る。

 ところが、ケーブルテレビが映らない。

 というのも、ケーブルテレビのデジタルセットトップボックスから接続する入力端子が見当たらないんである。3色ケーブルも、S映像端子も、i.LINK端子も。

 そんなはずはないと思って、説明書を読み直したり、配線を変えたり、あれこれ試してみたんだけど、どうしてもだめ。

「ええ? もしや、これってケーブルテレビが録画できないのでは……?」

 まさかそんなことがあるはずがない、僕の勘違いだろうとと思いつつも、パナソニックのカスタマーセンターに電話して問い合わせてみた。そしたら……

「はい、この機種には外部入力端子がございません」

 あっさり認めた!

「他のビデオ機器などからダビングすることはできない仕様になっております」

「じゃあ、ケーブルテレビは録画できないってことですか?」

「そういうことになりますね」

 いやいや、それおかしいでしょ。

 平成22年9月末の段階で、ケーブルテレビ加入者数は2533万世帯だそうだ。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000095431.pdf

 同じ年の日本の総世帯数が5336万世帯だそうだから、今や日本の約半分の家がケーブルテレビに加入していることになる。 僕みたいに、地上波よりケーブルの番組の方をたくさん録画している人も多いだろう。

 それなのに、ケーブルの番組を録画できないレコーダーを作っちゃったってえの?

「なぜこんなおかしな設計になってるんですか?」

「機能を簡素化いたしました」

「いや、そんな大事な機能は省略しちゃだめでしょ! 今、日本にケーブルテレビを利用している人がどれだけたくさんいると思ってるんですか? その人たちはみんな置き去りですか?」

「上位機種には外部端子の付いているものもございます」

「じゃあ、なぜこの機種では省略しちゃったんですか?」

「機能を簡素化いたしました」

「だから、なぜこういう仕様になってるのか、それをお聞きしたいんですけど?」

「機能を簡素化いたしました」

「それはもう聞きました!」

 いくら問い詰めても、「機能を簡素化」と、テープレコーダーのように繰り返すのみ。 口調はていねいだけど、「こんな簡単なことも分からんのか」とバカにされているような気がして、不快になってくる。

 まあ、「絶対にケーブルテレビは見ない」という人のために、機能を省略して安くした機種を売るのはアリかもしれないけど、その場合は、「本機種にはケーブルテレビの番組を録画する機能はございませんが、その分、お安く提供いたしております」とか何とか、大きく謳うべきだろう。

 しかし、箱にも取扱説明書にも、「ケーブルテレビは録画できません」などと書かれていない。もちろん店頭の表示にもなかったし、店員からも何の説明もなかった。たぶん店員も知らなかったんじゃなかろうか。

 当たり前だけど、買う時に機械の背面の外部入力端子の有無なんて、いちいち確認しない。これまでケーブルテレビの番組は録画できて当たり前だと思ってたから、よもやそんなこともできないレコーダーが存在するなんて想像できるわけがない。

 事前に知ってたら買わなかったよ、こんなもん!

「ホームページでは説明しているはずですが」

 とカスタマーセンターの人は言うのだが、調べてみたら、案の定、そんな説明はどこにもなかった。

http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=DMR-BRT210

「カタログには記載されております」

 後で調べてみたら、これもウソだった。DIGAのカタログにはどこにも、この機種ではケーブルテレビが録画できないという説明がないのだ。

 もっとも、カタログ9ページの右下隅には、背面の写真が小さく載っていて、よく見れば外部入力端子がないことが分かるのだが……これを見て「ケーブルテレビが録画できない」と気づく人間がどれだけいるんだろうね?

 別の機種に交換してくれるのかと訊ねたが、「そのようなことはやっておりません」という。交換したいのなら買った電気店に行ってくれというのだ。

 結局、DIGAははずして古いデッキをつなぎ直した。貴重な時間を無駄にしちまったよ。

 しかたがないので、保証書とレシートとともに、購入したJoshinに持っていって返品を依頼する。 

 箱を開けたとたん、店員は「ああ、これですか」と、僕がまだ説明をしてもいないのに、すべて納得した様子。どうやら僕の前にも苦情を言ってきた人がいるらしい(そりゃそうだ)。

 最初は店員さんも渋ってたんだけど、「購入する際に『ケーブルテレビは録画できません』という説明が一切ありませんでした」と強調したら、向こうは非を認めて、返品を受け付けてくれた。

 さすがに金だけ取り返すのは気が引けるので、いったん現金で返してもらった後、その場で、今度はちゃんと外部入力端子のある機種(1万8000円ほど高い)を買うという条件で合意した。

 その点では、Joshinの誠実な対応に感謝している。

 もうパナソニックはこりごりなので、別のメーカーのレコーダーを……と思ったのだが、ここで新たな問題が発覚。

 これまで我が家では、コピーワンスの番組はDVD-RAMに落としてたんだけど、今、DVD-RAMが使える機種を売ってるのはパナソニックだけなんだと。

 つまり、録りためた大量のDVD-RAMを無駄にしないためには、今後もパナソニックのレコーダーを買わなくちゃいけないということなのだ。ちくしょー、悔しい!

 ということは、パナソニックDVD-RAM対応機種の生産をやめたら、もうおしまいだ。

 これはベータの二の舞か!? いや、レーザーディスクも含めたら三の舞かもしれない。

 そう言えば我が家には、LDもずいぶんあるんだよな……。

 結局、DIGAの上位機種のDMR-BZT710というのを買ってきて、昨日のうちに接続も済ませた。

 今度はケーブルテレビの番組もちゃんと録画できることを確認。よしよし。

 が、ここでまたも問題発覚。

 接続したばかりで、まだ番組表が受信できていないので、しかたなく手作業で録画予約を入れていた。

 ところが、番組名を入れようとして愕然。

 中黒(・)が入力できない!

 記号一覧の中には、コンマとかピリオドとかアポストロフィーとか、使う機会の少なさそうな記号はあるのに、中黒がないんである。

 つまり「ドクター・フー」と入れようとしてもできなくて、「ドクター.フー」とかにしなくちゃいけないのだ。

 えええええーっ!? 何で!?

 とにかく記号自体がすごく種類が少ない。たとえば「+」「−」「=」はあるのに、「×」「÷」がなくて、代わりに「*」と「/」が入っているのだ。

 えー、つまり「×」は「*」で、「÷」は「/」で代用しろと(笑)。すごく技術屋的な発想だよなあ。こっちはプログラム書いてんじゃないんだから。番組名入れたいだけなんだから。

 まあ、「×」のつくタイトルなんて『HUNTER×HUNTER』ぐらいだから、支障がないっちゃないんだが。

 でも、中黒は要るよなあ、絶対! 使用頻度、ものすごく高いもんなあ。『ドクター・フー』もそうだけど、『スター・ウォーズ』とか『ジュラシック・パーク』とか『ハリー・ポッターと賢者の石』とか、中黒のあるタイトルなんていくらでもあるし。

 番組表から入力するにしても、連続ドラマなんかだとサブタイトルが入らない場合が多い。保存用にダビングしようとしたら、各話のサブタイトルは自分で入れなきゃいけないわけだし。

「中黒なんてピリオドで代用すりゃいいじゃん。いっそ省略して“機能を簡素化”しちまえ」

 と、この設計者は思っちゃったんだろうなあ。

 ユーザーの都合なんかぜんぜん考えちゃいないよなあ。

 このレコーダーの設計思想を見て、パナソニックへの不信が決定的になったよ

【追記と訂正】

 すみません! 中黒に関しては僕の早とちりでした! 中黒を入力する方法ありました。「記号」リストが表示されている状態で巻き戻しボタンを押すと別のページが出て、そこから中黒を入力できました。

 間違った情報を広めてパナソニックの名誉を棄損してしまったことを深くお詫びいたします。

(でも普通、使用頻度の高い記号は、真っ先に表示される仕様になってなきゃおかしいんだけどな……)