三点リーダはなぜ必要なのか

 先日、マイミクさんのつぶやきで、なぜ文章を書くのに三点リーダ(…)なんて使わなくちゃいかんのか、中黒(・)使えばいいじゃないか、みたいなことが書かれていたので解説しておく。

 簡単に言えば、三点リーダと中黒は用途が根本的に違う。

リーダー

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC_(%E8%A8%98%E5%8F%B7)

中黒

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%BB%92

 さらに、見た目もぜんぜん違う。

「まさか……」

 小説の中とかでよく使われるこの表現。これを中黒で代用すると、

「まさか・・・・・・」

 これは横書きだからまだ中黒の間隔が詰まって見えてるけど、縦書きだとさらに間隔が開いてマヌケっぽくなる。

 そもそも2マスで済むものを、何でわざわざ6マスも使うんだよお前は、って話なんだよね。

 ちなみに三点リーダを打つには、「てん」と入力すればいいだけ。

「てん」と打つと変換候補がいっぱい出て面倒くさいと思うなら、「てんてん」で「……」と出るように登録しておけばいい。僕はそうしてる。

 小説を書くのなら、そんな風によく使う言葉を登録するのは当たり前なんだけどなあ? 登場人物の名前とか。『トンデモノストラダムス本の世界』を書いた時は、「のす」と打ったら「ノストラダムス」が出るようにしたよ。

 あと、僕は「せん」と打つと「――」、「のま」と打つと「々」が出るように登録してる。(後者は「どう」でも出るけど、やっぱり変換候補がいっぱい出て面倒なので)

 なぜマイミクさんがこんな話題を書いたかというと、最近、ツイッターでこの議論が盛り上がったかららしい。

http://togetter.com/li/622332

 なんか「どっちでもいい」「三点リーダだろうが中黒だろうが俺は気にしない」と言ってる人が多いんだけど……。

 あなたが気にしなくても、 新人賞の応募原稿の下読みをする編集者がそれを気にする人かどうか、という視点が、すっぽり欠落してませんか?

 なぜそんな無意味なリスクをわざわざ負うのか。どっちでもいいんだったら、危険が少ない三点リーダにした方がいいじゃないか。

 不思議なことに、三点リーダ以外ではあまりこういう意見を聞かない。「句読点なんかコンマとピリオドで代用すればいいじゃん」とか、「0(ゼロ)とO(オー)は見分けつかないから、オーはゼロで代用してもかまわないだろう」とか、そんな意見は聞いたことがない。

 推測するに、三点リーダというものの知名度が低いせいで、不当な扱いを受けてるんじゃないだろうか。

 繰り返すけど、「てん」と打てば出るからね?

 最大の問題は、「三点リーダを知らないと教養が疑われる」ってこと。

 だって、小説とか読んでたらしょっちゅう三点リーダ、目にするでしょ? つまり、作家志望の人間なら知ってなきゃおかしい。「三点リーダなんてものがあるなんて初めて知りました」と言ったら、「こいつ、普段から本読んでないな」と思われちゃうわけよ。

三点リーダ不要論」を唱える人の心理には、三点リーダを知らないことを馬鹿にされたという体験のトラウマもあるように思う。でも、それは逆恨みってもんですよ。

 三点リーダを中黒で代用するメリットは何もない。逆に(少ないが)デメリットはある。

 だったらそんなことはしないのが合理的判断だ。

 他にも素人が文章を書く際によく無視する(or知らない)規則として、こんなのがある。

・段落の冒頭は1マス空ける。

 これは合理的な根拠がある。「段落の最初はここですよ」と示さないと、前の段落が行の最後まで続いていた場合、段落の区切りが分からなくなる。だから必要。

 ただ、ネットの文章では、段落を変えるごとに1行空けるものが多い。その場合、段落の区切りが分かるから、1マス空けは必要じゃないのかもしれない。実際、1マス空けをやってないものが多い。

 でも、モニターならまだしも、印刷物で段落ごとに1行空けをやられると、すかすかに見えちゃう。モニターならやってもいいけど、印刷物ではやらない方がいい。

・「!」や「?」の後は1マス空ける。

 これもけっこう知らない人が多いな。それこそ小説とか読んでたら気づくはずなんだけど。

「何その唐突な質問!? トラップか!? オレをブラコンと認めさせたいんだな!?」

「何その唐突な質問!?トラップか!?オレをブラコンと認めさせたいんだな!?」

 はい、どっちが読みやすいかは一目瞭然ですね。句点(。)で終わるのと違って記号で文が終わると、次の文との間に切れ目がなくて見にくい。だから1マス空ける。

 こうした規則の中には、確かに無意味なものもある。「擬音語はカタカナ、擬態語はひらがな」なんて、誰が考えたのか知らないけど無意味な規則で、こんなもんは従う必要はない。

擬音語はカタカナ、擬態語はひらがな?

http://togetter.com/li/613399

 でも、規則の中にはちゃんとした根拠のあるものもある。それは守った方がいい。

【余談】

 三点リーダについて検索してたら、こんなのがヒットした。

赤い糸切れちゃうよ・・・。上巻 (萌え萌え文庫)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4990569407/

 うわー、タイトルに三点リーダ使ってねえ!

 エヌオーワンセブンの萌え萌え文庫ってなんだよ。そんな出版社、聞いたこともねーよ。

 しかも紹介文がひどいひどい。

>ライトノベル新レーベル萌え萌え文庫第一弾。 荒削りでも将来性のあるオリジナリティーのある作品、ちょっと癖のある、とんがった作品をコンセプトに創刊した萌え萌え文庫。

>そんなコンセプトに負けないぶっ飛んだ作品です。

 コンセプトに「負けない」の? 「ふさわしい」じゃなく?

>もう旅行行くのやめようかと何度も挫けそうになるが、再度やる気を出して友達を誘おうとするが、相手にされず約束を破られ自暴自棄。

「が」がダブってるよ!

>今までに見た事も無い作風で物語が進みます。 登場人物のツッコミ、ボケに嵌まれば、腹を抱えて笑い、ページを捲る手が止まります。

 ページをめくる手止まるんかよ!?(笑) だめじゃん、それ。

>この作品の為にライトノベルと言うジャンルが、ますます不可解になる奇書となるでしょう。

 お前の説明からしてすでに不可解だよ(笑)。せめて「奇書と言えるでしょう」と書けよ。

 なるほど、日本語を分かってない編集者が編集やってんのか。だから中黒代用を許してるわけね。