『夏葉と宇宙へ三週間』

〔21世紀空想科学小説〕

夏葉と宇宙へ三週間

岩崎書店 1575円+税

12月9日発売

 小学6年生の夏休み、臨海キャンプの最後の日。突然、海の中から宇宙船が出現した。それに近寄った加納新(かのうあらた)と隣のクラスの首藤夏葉(すどうなつは)は、船内に吸いこまれてしまう。

 二人の前に現われたのは、夏葉の姿を借りた立体映像――この宇宙船ユーディシャウライン号のメインコンピューター・ユーディだった。ユーディは、この船のただ一人の乗員であるガルムイエ人の探検家ダリー・イスターンが死んでしまい、困っていることを告げる。ダリーが未開の惑星で発見した秘宝を届けるため、急いでガルムイエ星に帰還しなくてはならないのだが、宇宙船はニンゲン(知的生物)を乗せずに宇宙を飛んではいけない規則になっているのだ。

 ユーディに頼まれ、新と夏葉は宇宙の旅に出発する。目指すは銀河系の反対側、4万光年彼方のガルムイエ星。その途中、廃墟の惑星で恐竜に襲われたり、氷の惑星で遭難した宇宙船を調査したり、ロボット宇宙船ディアゴーンに追われて銀河中心の巨大なガスの渦に逃げこんだりと、様々な冒険を繰り広げる。

 ようやくたどりついたガルムイエ星で明かされる、10万年前の秘宝の謎。そして、思いがけない真実が明らかになる。

 小学生の頃、学校の図書室で、筒井康隆さんのSF童話集『かいじゅうゴミイ』(盛光社)を読みました。その中に、「うちゅうをどんどんどこまでも」という話が入っていました。

 博物館にあったロケットにこっそり乗りこんだ二人の子供。ちょっとだけ宇宙飛行を楽しむつもりが、地球に戻る方法が分からず、宇宙をどこまでも突き進んでゆく。ついに宇宙の果てにたどりつくと……。

 ラストのどんでん返しと、ものすごい「教訓」に、子供心に「おいおい、子供向けにこんな話書いていいの!?」とびっくりし、同時に大喜びしてしまったものです。

 この〔21世紀空想科学小説〕は、日本SF作家クラブ創立50周年を記念して、日本SF作家クラブと岩崎書店のコラボレーションで誕生したシリーズです。かつて小松左京さんや星新一さんや筒井康隆さんたちが子供向けのSFを書き下ろしたように、現代のSF作家が21世紀の子供たちに向けて新作SFを書き下ろすというものです。すでに北野勇作、東野司、藤田雅矢林譲治、藤崎慎吾、梶尾真治、松崎有理氏らの作品が刊行されています。

SF作家クラブ/岩崎書店 「21世紀 空想科学小説」

http://sfwj50.jp/projects/iwasaki/

 この依頼を受けた時、真っ先に思いついたのは、「うちゅうをどんどんどこまでも」のオマージュをやってやろう、ということでした。男の子と女の子が宇宙船に乗って、宇宙をどんどん突き進んでいく話にしようと。さすがに宇宙の果てまで行くのはおおげさなので、4万光年ということにしましたが。

 あと、やはり子供の頃に読んだG・マルチノフの『宇宙探検220日』(講談社)という小説が心に残っていたので、タイトルも宇宙旅行の期間を入れようと思いつきました。だから「三週間」。

 僕が子供の頃に夢中になって読んだ児童向けSF、特に宇宙探検ものの面白さを詰めこんだつもりです。

 もちろん大人が読んでも楽しいはずです。古くからの僕の読者の方なら、『サイバーナイト』や『ギャラクシー・トリッパー美葉』を連想されることと思います。

 あと、筒井さんに敬意を表して、ラストで「おいおい」と言われるようなものにしようと思いました。お行儀のいい話はつまらない。子供向けでもこれぐらいやっていいよねと。

 どんなラストかは読んでのお楽しみ。きっと子供の心に残るもののはずです。

【12月25日追記】

 この〔21世紀空想科学小説〕シリーズは、あまり書店に並びません。お求めの方はAMAZONなどを利用されることをおすすめします。