文庫化『UFOはもう来ない』『SF JACK』
こちらも告知遅れました。以前に出した本の文庫版が2冊、すでに書店に並んでおります。
『UFOはもう来ない』は2012年発表の長編小説。宇宙船の事故によって京都の山中に取り残された異星人を3人の小学生が発見。巨大UFOカルトによって誘拐・監禁された異星人を、インチキUFO番組のディレクターと美人のUFO研究家、それに小学生たちが力を合わせて奪還に挑む……というお話です。
ファースト・コンタクトもののSFであると同時に、コン・ゲーム小説であり、ジュヴナイル冒険小説でもあります。UFOをめぐるうんちくもたっぷり入ってます。
単行本との違いは、各章のタイトルが日本語になったこと。さすがに『アウター・リミッツ』のサブタイトルの原題というのはマニアックすぎたかと反省しました(笑)。いちおう第一章の「宇宙人現わる」と最終章の「見知らぬ宇宙の相続人」は『アウター・リミッツ』なんですけどね。
僕が『アウター・リミッツ』を見てた頃の、「何かすごいことが起きてる!」というプリミティヴなわくわくどきどき感を再現できないかと思って書きました。
詳しい解説はこちら。
http://homepage3.nifty.com/hirorin/ufohamoukonai.html
『SF JACK』は2013年、日本SF作家クラブ50周年を記念して出版されたアンソロジー。新井素子、上田早夕里、冲方丁、小林泰三、今野敏、堀晃、宮部みゆき、山田正紀、山本弘、夢枕獏、吉川良太郎の作品を収録。
単行本との違いは、瀬名秀明さんの作品が抜けていること(ご存知の通り、日本SF作家クラブを退会されたので)。
僕の作品「リアリストたち」は、人類の大半が仮想現実で暮らすようになった22世紀の社会での、新たな差別意識の話。
出版社の自主規制などもあり、現実の差別問題はなかなかストレートに描くのは難しい。でも、SFの形でなら、今はまだ存在しない架空の「差別」を描けるんじゃないか……。
と思いついて書いた話なんですが、ネットでのレビューを見ると、これが差別をテーマにした話だと認識している人がほとんどいなくて、ちょっとがっかりしてます。それどころか、こういう未来世界を肯定しているような人もいて、頭抱えてます。
ヒロインの一人称で書き、まず読者に感情移入させておいて、実は彼女はこういうおぞましい考えの持ち主だった……と明かしたらショックだろうと計算して書いたんですが、けっこうみんなショックを受けず、ヒロインの考え方を平然と受け入れてるみたいなんですよね。それは僕の意図と正反対なんですけど。
ふと思いました。22世紀を待つまでもなく、この差別ってすでにはじまってんじゃないですかね? 最近のツイッターの「エルゴ」批判とか見てると、そう思えてきて怖いです。
僕以外の作品では、冲方丁「神星伝」がダントツに面白いです。TVアニメの1クール分を短編に詰めこんだような和風ワイドスクリーン・バロック。おすすめです。