第21回日本トンデモ本大賞決定!

 6月9日、新宿ロストプラスワンで「第21回日本トンデモ本大賞」が開かれました。

 と学会エクストラの途中、発表に用いる書画カメラが故障するというトラブルがあり、どうなることかと思いましたが、何とか乗り切ることができました。ご来場者のみなさま、ニコ生でご覧になっていたみなさま、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 故障の原因は不明です。リハーサルでは機材に問題なかったはずなんですが……もしかしたら、その前にやった川口友万氏によるイオノクラフトの実演の際に発生したノイズのせいではないか、というのが、仲間内のもっぱらのうわさです。川口氏の解説にもありましたが、あれ、高電圧使ってるんですよね。楽屋裏では「なるほど、これがUFOの電磁効果か!」と冗談を言ってました。

 イオノクラフトというのは、帯電した空気を下向きに加速することによって浮上するという、きわめて単純な原理の飛行物体です。60年代に日本で「空飛ぶ円盤の飛行原理ではないか」と言われていて、何度かテレビでも紹介されていました。『空中都市008』にも「アイオノクラフト」という名で登場してましたね。 最近は「リフター」とか呼ばれてるらしいんですが……まあ、50年も前から研究続けてて、いまだに実用化しないようじゃ、望みは薄そうですけどね。

 僕は実物を目にするのは初めてで、リハーサルで見て「これがイオノクラフト!」と興奮しておりました。ちなみに本番では一発で浮上しましたが、リハーサルではなかなかうまくいかず、電極の間でバチバチ放電してました。

 ちなみにUFO=イオノクラフト説を唱えていた内田秀男氏(工学博士)は、あのヘンリー・C・ロバーツ『ノストラダムス大予言原典 諸世紀』(たま出版)の監修をやっています。監修者まえがきを読むと分かりますが、バリバリのトンデモさんです(笑)。

 閑話休題

 投票結果は次のようになりました。カッコ内はニコ生での投票数で、1パーセントを1票として数えています。

●泉パウロ『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』(ヒカルランド)

 53(+55) 計108票

大川隆法『宇宙の守護神とベガの女王』(幸福の科学出版)

 32(+16) 計48票

●小松正広『UFOと日本人の惑星』(文芸社

 36(+23) 計59票

●竹本忠雄『秘伝ノストラダムス・コード』(海竜社)

 3 (+7) 計10票

【ノミネート外作品】

「はりきり切手大将」 1票

 というわけで、今年度の日本トンデモ本大賞は、泉パウロ『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』と決定しました。

 著者は純福音立川教会の牧師さん。東日本大震災フリーメーソンが起こした人工地震だとか、9・11同時多発テロは自作自演だとか主張する本です。同様の本はベンジャミン・フルフォードリチャード・コシミズも出していますが、この本がユニークなのは、列挙されている陰謀の証拠の数々です。

 たとえばACの「ポポポポーン」のCM。著者によればACとは「アンチキリスト」であり、「ポ」はポロニウムの略で、4回の「ポ」は4基の原子炉の破壊を意味するのだそうです。 出てくる動物にしても、ウナギはナマズに似ているから地震を意味しているとか、ネズミは食糧難だとか、マンボウ津波による死者だとか、いちいちこじつけています。

 映画『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のポスターに「03.11.11」という公開日が書いてあるのも、ドラマ『HEROES』のOPで「O」の字がぴかぴか光るのも、東日本大震災を事前に予告していたのだそうです。『ターミネーター2』に「CAUTION 9'11"」という文字が出てきたり(9フィート11インチの高さ制限なのですが)、ハリウッド版『Godzilla』の一場面で時計の針が9と11を指しているのも(8時55分です)、9・11同時多発テロを陰謀組織が事前に警告していたのだそうです。

 秘密のはずの計画をなぜわざわざ映画にして事前にバラさなきゃいけないのかは、さっぱり分かりません。

 他にも、原発が爆発するシーンのある黒澤明監督の『夢』はもちろん、『新世紀エヴァンゲリオン』『秘密結社鷹の爪』『ザ!鉄腕!DASH!!』などもフリーメーソンの作った番組で、震災や原発事故を事前に予告していたのだそうです。『宇宙戦艦ヤマト』は放射能除去装置が実在することを示しているらしいです。

 最新刊の『驚愕の対策 3・11人工地震でなぜ日本は狙われたか[?]』(ヒカルランド)では、さらにエスカレートして、『ドラゴンボール』『ONE PIECE』『アンパンマン』『ウルトラマン』『魔法のプリンセス ミンキーモモ』などもフリーメーソンの陰謀にされています。「円谷」という名はコンパスと定規を意味し、フリーメーソンのシンボルなのだそうです。フリーメーソンは『ミンキーモモ』の放映に合わせて地震を起こしているのだそうです。

 その他のノミネート作についても簡単に。

●『宇宙の守護神とベガの女王』は、大川隆法氏が中学生の次女の過去世である「宇宙の守護神」を呼び出して語らせるという内容。宇宙の守護神の姿は、二本の腕があってお尻から火を噴くモスラで、惑星連合とALSOK契約を結んでいて、敵と戦う時には宇宙戦艦ヤマトみたいな姿に変身するそうです。目から光線を出したり、口から超音波を出したり、お尻からうんち爆弾を落とせるそうです。

 僕が言ってるんじゃないですよ。宇宙の守護神が自分でそう言ってるんですから。娘さんも「私が誤解されてしまいます」と困ってしまっています。女の子なのに、前世がお尻から火を噴くモスラじゃねえ。

 長女の過去世である「ベガの女王」の方は、さすがに女王だけあって美しいのですが、ブタに囲まれて踊っています。

 

●『UFOと日本人の惑星』は、子供の頃から何回もUFOに誘拐されては記憶を消されていたことに気づいた著者が、よみがえった記憶を書きつづった本。これだけならよくある話ですが、この本がユニークなのは、全編、5・7・5・7・7で書かれていること。「UFOで/欠席したから皆勤が/飛んだと抗議すでにしていた」といった具合。何の必然性があるのかよく分かりません。著者はこれを「叙事詩」と呼んでいます。

 UFOの中でヒトラーに出会ったというくだりもあるのですが、なぜかヒトラーは食べるものに困っているらしく、ホテルの残飯をあさっていたそうです。

●『秘伝ノストラダムス・コード』は、ヴライク・イオネスク『ノストラダムス・メッセージ』の訳者が、自分でもノストラダムス解釈に挑戦した本。日本で出たノストラダムス本の中でも最高の厚さを誇ります。しかし内容はハチャメチャで、碑文を縦読みして「SIPR」という文字列を見つけ、それを根拠にノストラダムスシオン修道会の総長だったと結論します。他にも、「ローザンヌ」という地名がアメリカのことだと言ったり、nepveuとPontifeという単語を合わせて「ニッポン」と訳したりします。

 ノストラダムス福島第一原発の事故も予言していたと主張しているのですが、著者の訳文は、16世紀のフランスの詩のはずなのに、「原子核」「ウラン238」「中性子」「原子炉」「ベータ線」「核分裂」といった単語が頻出する、むちゃくちゃな超訳です(もちろん原文にそんな単語はありません)。

 ちなみに著者は筑波大学名誉教授です。

 ノミネート外で投票されていた「はりきり切手大将」は、と学会エクストラで新田五郎氏が発表した子供向きのホビーマンガ。1981年に『少年チャレンジ』に掲載された作品です。プラモとかゲームとかだと盛り上がるけど、切手収集はマンガの題材としては無理があるのがよく分かります。