日本SF作家クラブ設立50周年記念出版『SF JACK』
日本SF作家クラブ設立50周年を記念する、SF作家12人によるオール書き下ろしアンソロジー。角川書店より3月1日発売。
収録作品は次の通り。
冲方丁「神星伝」
上田早夕里「楽園(パラディスス)」
今野敏「チャンナン」
山田正紀「別の世界は可能かもしれない」
小林泰三「草食の楽園」
瀬名秀明「不死の市」
山本弘「リアリストたち」
新井素子「あの懐かしい蝉の声は」
堀晃「宇宙縫合」
宮部みゆき「さよならの儀式」
夢枕獏「陰態の家」
昨日、見本が届いたので、ひと晩で一気読みしました。
冒頭の冲方丁「神星伝」がとにかく傑作! たった48ページの中に、長編アニメ1本分ぐらいのストーリーとアイデアを詰めこんだ和風ワイドスクリーン・バロック。クライマックスは巨大ロボ戦だ!
話自体はアニメとかでよくある要素の寄せ集めなんだけど、世界観と文体が独特で楽しい。読みながら、『ファイブスター物語』や『ブラックロッド』を連想してたんだけど、読み終わってしばらくしてから、はたと気がついた。
これって『ニンジャスレイヤー』だよ!(笑)
「アッパレ=ナリ!」という掛け声とか、絶対意識してる。あれを冲方風にアレンジしたらこうなるんだ。うん、すごく面白い。
上田早夕里「楽園(パラディスス)」は、シミュレートされた死者と対話できる近未来の技術を描いた話。これはじきに現実になりそうだな。
山田正紀「別の世界は可能かもしれない」は、『アルジャーノンに花束を』のサスペンス版という感じ。現代の脳科学から連想される架空理論の炸裂は、まさに山田氏特有の味。
宮部みゆき「さよならの儀式」は、泣けるロボットもの。
夢枕獏「陰態の家」は、これまた作者の持ち芸とも言うべきオカルト・ハンターもの。
他にも、どの作家もそれぞれの持ち味を色濃く出しています。
ちなみに僕の作品は、昨年、僕の身に実際に起きた事件からヒントを得て、未来の話に置き換えたもの(とは言っても、実際に体験したのは冒頭のシチュエーションだけなんだけど)。
こういうテーマは一般小説では扱いづらい。SFだからこそ真正面から書けるんですよね。
これも読んでいただければ、「いかにも山本弘だな」と思ってもらえるはず。
この日本SF作家クラブ設立50周年記念出版、他にも『日本SF短篇50』(早川書房・全5巻)の刊行がスタート。1963年から現在までの、日本SF作家の代表作50本を収録したアンソロジー。僕の作品も5巻に収録予定です。
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/21098.html
ちなみに1巻に小松左京氏の作品が入ってないのは、2巻に「ゴルディアスの結び目」が入るからです。