SF大会レポート1:クラシック特撮とかいろいろ

 7月20〜21日、広島のアステールプラザで開かれた第52回日本SF大会「こいこん」に行って来たので、何回かに分けてそのご報告。

 会場に来てくださった方、キョウリュウグリーンのコスプレしてたうちの娘、ご覧になっていただけたでしょうか? あの緑色の制服、妻の労作なんですよ。

●オープニング

 なんとOP映像は、ニコ動で有名な「厳島神社の人」ことzoziさんの新作CG! 相変わらず実写合成すごい。

 後で知ったんだけど、アステールプラザの前を歩いてる人もみんなCGだったんだそうです。ぜんぜん気がつかなかった!

●あなたの知らないクラシック特撮

 しょっぱなは僕の立てた企画。ゲストは開田裕治さん。同じ時間帯に「すごい科学で守ります!」「原田実トンデモ日本史の世界を語る」「なっちゃんの初級科学実験講座」といった面白そうな企画がかぶっちゃって、悔しい思いしました。同時にいろんな企画が走るから、すべて見られないのがSF大会の難点ですね。

 僕の企画は、タイトル通り、パブリックドメインになっている古い映画の中から、ほとんどのSFファン、特撮ファンが知らないであろうマイナー作品をピックアップ、当時の特撮技術を堪能しようというもの。

 地震と洪水の特撮がすごい『雨ぞ降る』『世界大洪水』、縮小人間ものの『悪魔の人形』、宇宙探検ものの古典『月世界の女』、未来メカがいっぱい登場する『来るべき世界』『五十年後の世界』、原始時代ものの『紀元前百万年』、ファンタジー大作『バグダッドの盗賊』、戦争ものの『地獄の天使』『東京上空三十秒』、海底人と怪獣が登場する『竜宮城』……などなど。特撮に詳しい開田氏もほとんど見たことがないというし、僕自身、つい最近まで存在を知らなかった作品もあり、みなさんも珍しかったんじゃないかと思います。

 第一次世界大戦の空中戦を描いた『地獄の天使』(1930)なんて、「ハワード・ヒューズが監督したトンデモ映画」とかバカにされてるけど、実際に見てみたら、すごすぎて唖然。何十機もの実機が入り乱れる一大ドッグファイト・シーンも大迫力だけど、飛行船が炎上して落下するシーンの特撮が、とてもこの時代とは思えない完成度。あと、「『ラピュタ』の元ネタこれか!?」とか「『スタンレーの魔女』の元ネタこれか!?」とか、いろんな発見がありました。日本版DVDも出てるんで、おすすめです。

 他にもこんな作品を紹介。 いずれもYouTubeで見られます。

『透明光線』The Invisible Ray (1936)

http://www.youtube.com/watch?v=kIPqRoTNYqk

 アフリカに落ちた隕石に含まれる放射性物質を研究していた科学者(ボリス・カーロフ)が、放射能を帯びて皮膚が光るようになる。彼が触れるだけで人間や動物が死んでしまう……という、科学的にはデタラメなSFホラー。

 顔や手が輝いている光学処理、どうやってるのか不明だけど、かなりカット数が多く、手間がかかっただろうと推測されます。1コマずつ手描きでマスク作ってるのかな?

 この光り方で『宇宙船の襲来』I Married a Monster from Outer Space(1958)に出てきた宇宙人を連想し、もしやと思って調べてみたら、特技監督が同じ人でした。ジョン・P・フルトン。『フランケンシュタイン』(1931)、『魔人ドラキュラ』(1931) 、 『ミイラ再生』(1932)、『透明人間』(1933)、『フランケンシュタインの花嫁』(1935)などを手がけた名特撮マン。『十戒』(1956)で、紅海がまっぷたつに割れるシーンも、この人の仕事だそうです。

『宇宙船の襲来』を見た時に「この時代にしてはすごい合成やってるなあ」と感心したもんだけど、まさかその22年前に同じことをやってたとは思いませんでした。

The Invisible Woman (1940)

http://www.youtube.com/watch?v=r4TCO_7rXj4

 女透明人間の出てくるコメディ。全裸の女がうろちょろするんだけど、画面に映らないから、倫理コードにひっかからない(笑)。

 会場でも笑いが起きてたんで、今見てもコメディとして受けるんじゃないかと思います。日本でのDVD化を希望する映画のひとつ。

 これも特撮が上手いんですよ。操演と合成を上手く使い分けてて感心します。透明な瓶やグラスが宙に浮くのって、けっこう難しい技術のはずなんだけど。ストッキング穿くところも、単純な二重露光なんだけど、透けて見えるのが逆にリアルだったりします。

 調べてみたら、これもジョン・P・フルトンのお仕事でした。 やるなあ、フルトン。

The Mechanical Man (1921)

http://www.youtube.com/watch?v=mNo0Is0JPpo

 1921年に作られたロボットもの。「実写版『鉄人28号』みたいだ」という声があったけど、あれより39年も早いんです。

 着ぐるみはかなり重そうで、よたよたとしか歩けない。これでどうやって逃げる車を追いかけるのかと思ったら……ここで合成か! 思わず笑っちゃったけど、創意工夫が感じられて楽しいです。

 最後は二台のロボットの対決。元祖ロボットバトル! 操縦の方法が今見るとかなりレトロ。当時は携帯できるサイズのリモコンなんて想像できなかったんでしょうな。

 でも、テレビを見ながら遠隔操縦してるのがすごい。1921年の映画なのにテレビが出てくるとは!

 90分の間にいろんな作品を紹介できたのはよかったんだけど、うっかりして『猿人ジョー・ヤング』(1949)と『Dr.Cyclops』(1940)を紹介するの忘れた!

『Dr.Cyclops』の特撮もすごいんですけどねえ。

http://www.youtube.com/watch?v=vz2ChHGknUw

 痛感したのは、僕らSFファンや特撮ファンは、どうしてもモンスターに興味があるもんで、怪獣や宇宙人が出てこない特撮映画に関心が薄いということ。だから、その方面の情報がすっぽり欠け落ちてるんですね。『雨ぞ降る』『世界大洪水』『悪魔の人形』『来るべき世界』あたりは、今見てもすごいミニチュアワークや合成に仰天するんですが、きちんと評価されてるとは言いがたい。もっとこういう作品に注目していただきたいです。

 あと、こういうパブリックドメインになった特撮映画のDVDを出してくれるメーカー、ありませんかね。『透明光線』や『悪魔の人形』『Dr.Cyclops』『The Invisible Woman』あたりは、日本語字幕つきで見たいんだけど。