SF大会レポート2:SF大会で新作のアイデア浮かんだ

●子供たちにSF本を

 作家・川端裕人氏らのパネル。

 今、学校図書館に子供向けのSF全集が置かれていない。かつては、ジュヴナイルSFがきっかけでSFにハマる子供が多かったんだけど、それが失われたということは、次世代のSFファンが育たないことになる。これはSF界の危機ではないのか……という話。

 僕も若い世代にどのようにSFを浸透させるかについて、憂慮している一人です。『ハリー・ポッター』の影響で子供たちの間にファンタジーは流行ってるし、『学校の怪談』系のホラーも定着してる。もちろん『名探偵コナン』とかの影響でミステリも人気がある。だけど、SFだけがなぜか根付かない。

 SFが売れてないわけじゃないんですよ。『レッドデータガール』なんて、かなりオーソドックスなSFだと思うし、『図書館戦争』や『NO.6』もSF。アニメやマンガにもSFものが多いし、実写ドラマや映画でも、ロボットやタイムスリップやパラレルワールドを扱うものが多くなっている。

 ただ、それが「SF」というジャンルだと認識されていない。だから、それぞれの作品には人気が出ても、読者の興味はSFというジャンルには向かない。現実にこれだけ売れているにもかかわらず、出版界にはいまだに「SFは売れない」というジンクスを持ち続けている者が多い……。

 その状況を打破しようと、僕も『地球最強姉妹キャンディ』とかを書いてるわけなんだけど……うーん、壁は厚いな。

 読んでくれた人はたいてい「面白い」と言ってくれる。問題は手に取らない人が多いこと。手に取ってさえくれればなあ……と、いつも歯がゆい思いをしています。

 SFを読んでいない人にSFの魅力をどう伝えればいいのか。

 ここでヒントになるのは、三上延ビブリア古書堂の事件手帖』や野村美月文学少女』シリーズ。あれのSF版みたいなものを書けないか、と前から思ってました。SFの好きな美少女が、毎回、SF作品のことを熱く語る話。

 ただ、どういう設定にするかが問題。古書店の話にしたら『ビブリア古書堂』の二番煎じになるし、そもそもミステリ仕立てだと話のパターンが限られて、すぐに苦しくなりそうな気がする……。

 ところがこのパネルを見ていて、アイデアがひらめいた。

 これ、いけるじゃん!

 自分で言うのもなんだけど、これ、絶対に面白くなる。どこかに売りこもう。

●S3Dプロジェクションマッピング“時空の階段”

 1日目の最後の企画。午後8時からの、会場の正面階段を利用したイベント。妻や娘がプロジェクションマッピングというものを知らないというので、連れてきました。僕もテレビとかでは何度も見てるけど、実際に見るのは初めて。

 17組の作家の競作なんだけど、やっぱり階段という場所を上手く利用した作品が面白い。上から立体が転がってきたり、階段が崩れたりするやつ。

 しかしこれらの作品、この場所でしか上演できないんだよなあ。もったいない。

●【サカサマのパテマ】吉浦監督ってどんな人?【イヴの時間

イヴの時間』の監督・吉浦康裕氏と、笹本祐一氏の対談。どうでもいいけど笹本さん、今回、ずいぶんいろんな企画に出てたなあ。

イヴの時間』や新作『サカサマのパテマ』の裏話がいろいろ。『サカサマのパテマ』では、いろんな年齢層のアニメーターが参加してるんだけど、大橋学氏もワンカットだけ担当してるという話にびっくり。大橋学、まだ現役だったのか!?(『宝島』のOPとED描いた人だよ)

 この秋公開の『サカサマのパテマ』、ニコ動の公式配信で予告編と最初の方だけ見たけど、ものすごく面白そうで、期待大です。

公式サイト

http://patema.jp/

 ちなみに吉浦氏もやっぱり、SFにハマったきっかけは、小学生時代に読んだ子供向けのSF全集なんだそうです。 やっぱり、ああいうの大事なんだ。

 終了後、壇上に上がって吉浦氏にあいさつ。「『水のコトバ』で好きになって、『イヴの時間』も大ファンです」という話をしたら、向こうも「『アイの物語』読んで感動しました」とのこと。

 ああ、道理でサミィが「私はアンドロイドです。人間ではありません」と言うシーンに既視感があると思ったよ(笑)。

「『詩音が来た日』のアニメ化の際にはぜひ声をかけてください」と言われちゃいました。機会があればね……。(実は『アイの物語』のアニメ化企画、一度ポシャってるんだよね)

 あと、『家なき子』で使われた立体視の原理を、吉浦氏も笹本氏もご存じなかったので解説。人間の眼は、暗いと視神経から脳に送られる信号がわずかに遅れる。片方だけに色がついているサングラスで、高速で横にパンする映像を見ると、左右の眼から脳へ伝わる信号にわずかに時差が生じ、モニターよりも手前に画像があるように見える。手前のセルを奥のセルや背景より早く動かせば、奥行きがあるように見える……らしい。

 でも、『家なき子』以外で使われたって話を聞かないから、やっぱり実用的じゃなかったんでしょうな。しょっちゅうパンしてるわけにもいかないしね。

●サイン会

 いっぱいサインしました。最新の『MM9―destruction―』から、昔の『妖魔夜行』や『ソード・ワールド』リプレイ本まで、みなさんいろんな本を持ってこられます。「おお、こんな懐かしい本が!」というのもちょくちょく。

 中に中国から来られた方が一人。「先生の小説、大好きです」と言われました。『アイの物語』と『去年はいい年になるだろう』は中国語版、出てるからなあ。外国にもファンがいるというのはありがたいことです。