「インディアナポリス」問題:朝日新聞の言い換え集
大手マスコミには必ず「言い換え集」「禁句集」というものが存在する。
高木正幸『差別用語の基礎知識'99』(土曜美術社出版販売)という本には、「マスコミの言い換え」の例として、朝日新聞の「取り決め集」1994年版が収録されている。 内容を見てみると――
▽めくら→盲人、目が不自由な人
▽おし、つんぼ→ろう者、ろうあ者、口が不自由な人、耳が不自由な人
▽文盲は使わない。
(めくら判、つんぼ桟敷なども避ける)
などなどは、まあよくある例だけど、
▽現地人→現地の人、○○国の人
なんてのは首をかしげる。「現地人」と「現地の人」で、何がどう違うというんだろうか?
他にも、
▽養老院→老人ホーム、老人養護施設
▽未亡人→故○○氏の妻
▽女流作家、女流画家(特に必要なとき以外は使わない)
▽女傑、女丈夫(使わない)
▽主人、亭主→夫(なるべく言い換える)
などなど、「えっ、そんな言葉まで?」と驚く例がいくつも。
犯罪関係の用語だと「強かん」は「乱暴、暴行」に言い換えるが、「ただし、刑法上の罪名は別」と書いてある。つまりレイプ犯の罪名を「強姦罪」と書くのはいいけど、それ以外では書いてはいけないと……。
わけが分からないよ。
他にも、「バレる」「ヤバい」「町のダニ」「賊」「しらみつぶし」「ずらかる」「いちゃもんをつける」「ケツをまくる」なども「不快感を与える」という理由で使わないことになっている。ええー? 「しらみつぶし」や「いちゃもんをつける」で不快感を覚える人なんているの?
ちなみに、このリストに「インディアン」は含まれていない。1994年版なんで、今はどうなってるのか分からないけど。
ただ、注意しなくてはならないのは、この「言い換え集」、絶対に遵守しなくてはならないものではない、ということ。
前文では、「人権を擁護すること、差別を受ける人の身になって考えること」という基本的な姿勢が示され、「以下の用語例の中にあるものでも、文脈上、前に述べた基本的精神に反しないことが明らかであり、表現の上でぜひ必要な場合は、使ってよいケースもあり得る」と書かれている。 そりゃそうだわ。
で、僕が疑問なのは、本当に創土社では「インディアン」は「理由の如何に拘らず弊社基準で使用不可」なのか、ということ。
もしかして、前文に「表現の上でぜひ必要な場合は、使ってよいケースもあり得る」と書かれていて、それを読み落としてるんじゃないのか、という気がひしひしとする。常識的に考えて、そういう前文入れるだろ、普通?
そうでないと、ホラー小説なんて出版できないもの。
もし本当に「理由の如何に拘らず弊社基準で使用不可」だとしたら、創土社の基準は朝日新聞のそれよりはるかに厳しいってことになっちゃうんだが……。