星雲賞受賞の言葉

 9月3日、静岡に行って、星雲賞をもらってきました。

 ちなみに受賞式の司会は、SFファンとしても有名な(『SFマガジン』に連載持ってる)声優の池澤春菜さんでした。池澤さんの声で僕の名前と作品名が呼ばれるのは、ちょっとドキドキしましたね。

 録音していたわけではありませんが、授賞式の壇上では、だいたいこういうことを喋ったと思います。自分の記憶で書きますまで、実際に喋ったことと多少違っているかもしれませんが、ご容赦ください。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 投票していただいた皆様、どうもありがとうございます。

 作中でも書きましたが、『神は沈黙せず』が星雲賞を取れなかった時には、本当に悔しい思いをしました。あの時は小川一水さんの『第六大陸』に取られたんでした。

 その後も『アイの物語』で取れるかなーと思ったけど取れず、『MM9』で取れるかなーと思ったけど取れず……(注。『地球移動作戦』に触れるのを忘れた)だから今年もダメかなーと思ってたんですが、意外にも星雲賞をいただいてしまい、大変に嬉しく思っております。

 この作品はPHPの『文蔵』という雑誌に連載されたものです。普通の小説や時代小説ばかり載っている雑誌に、よくこんな本格SFを載せていただけたなと、企画を通していただいた編集の大山様に深く感謝しております。

 企画が通った直後、知り合いにメールや手紙を送りまくったんですね。「作品への出演をお願いします」「作中に登場させることを許可してください」と。そうしたら50通ぐらい返事が返ってきまして(注。記憶違い。調べ直してみたら60通以上だった)、みなさん快諾していただけました。中には「殺してくれていいよ」とか、「思いきり無惨に殺してください」とか(笑)言う方もおられました。

 さすがに全員に出ていただくことはできなかったんですが、なるべく多くの方に出番を作りました。小川一水さんもそのお一人ですし、他にも今日、この会場に来られている方が何人もおられます。そうした協力していただいたみなさんに、この場を借りて感謝いたします。

 あと、この場に来られなかった方――特に亡くなられたお二人の方について触れておきたいと思います。

 一人は執筆中に亡くなられた志水一夫さん。ご存じの方も多いでしょう。SFファンでしたし、超常現象の分野などで多くの業績を残された方です。

 もう一人は、本の出版後に急逝された、マンガ家のはぬまあんさんです。はぬまさんには重要な場面でご出演いただいています。

 2001年当時、はぬまさんは『いい旅ロボ気分』というマンガを連載しておられました。いろんなロボット関係の場所に取材に行くという実録マンガなんですが、僕はそれを読んでなかったんですね。そうしたら、はぬまさんがわざわざコピーを送っていただきまして、それが大変に参考になりました。

 あと、『いい旅ロボ気分』には加賀美という女性編集者が出てきます。これは実ははぬまさんが創造した架空のキャラクターだったんですけど、はぬまさんが「作中では加賀美は実在していることにしたら面白いんじゃないか」と助言してくださったので、そのアイデアを取り入れさせていただきました。

 ですから、はぬまさんには特に深い感謝を捧げたいと思います。

 あと、もう二人、ぜひ感謝したい人物がいます。

 それは、今日この会場に来て、そこに座っています(と、客席を指差す)僕の愛する妻の真奈美と、娘の美月です。

 2001年当時、娘は5歳だったんですが、今は15歳になっていまして、順調にオタクに育っております(笑)。

 この世界にはつらいことや悲しいこともたくさんあります。それでも僕は、この歴史が好きです。このタイムラインでこれからも生きていこうと思います。

 どうもありがとうございました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−