いじめ問題をめぐって(後)

 その僕の目から見て、この人たちが言っていることは、本当にどれもその通りだと思う。

いじめられている人に見てほしいツイまとめ

http://togetter.com/li/333249

>いじめが本当に深刻なのは、いじめられる側が「いじめられてもしかたない」と自ら思ってしまうことだ。「原因」という含意の大きな言葉がこれを可能にしてしまう。原因はあるかもしれないが、責任はないのだ。原因があるとしても堂々と生きていい。

>何回も言うけど「いじめはいじめる側が100%悪い」からね。なんでいじめられる側にも責任があるみたいなことになってんの。あるわけないだろ。鍵が開いてたら勝手に他人の家に入ってもいいの? 悪い悪くないは防犯とは違う話でしょ。

>「イジメから逃げた」なんて思うな。自分に改善点があるかも……それは勿論そうだ、だけど、それ以前の問題だ。心と体が健全に成長する上で不適切な環境下に自分を置いておく義務はない。人には権利がある、好きなことを好きといって、友達と遊んだり笑ったりイジワルされないのは立派な権利だ。

>実際やるかどうかは置いといて、「あいつら許せねえ復讐してやる」って思うことは罪じゃないよ。復讐なんて考えちゃダメ!><強く生きようよ! なんてのはいじめられてない奴のきれいごと&戯言。恨みにまみれてたっていいじゃないか。

>いじめられてて本気でどうしようも無くなったときは家に引きこもってその中で自分のためになることをしよう。勉強ごとき通信教育でもええねん。大検だってある。あとは好きな事を見つけて一つの分野に”尖った”人間になればワンチャンあるで

 そうだよ、逃げたっていいんだよ。

 ただし、逃げるのは「いじめから」「学校から」だよ。人生から逃げちゃだめ。

 窓から飛び降りなかったら、いつかいいことあるから。僕みたいにかわいい嫁さんもらってかわいい娘が生まれたりするから。

 ひとつだけ、異論を唱えたいのはこういう意見。

>あと、「将来コイツらを見返してやろう」なんて思うな。その気持ちは重荷になる。そんなクソみたいなことされた事実なんて、君を構成するべきモンじゃない。過去は関係ない、好きなように努力して好きなように幸せになればいい。原動力にしようなんて思うな。ただの不運に、意味を見出さなくていい。

 僕は「こいつらを見返してやろう」と思って生きてきた人間なんで、これはちょっと賛成しかねる。確かにそれが「重荷」になる子もいると思う。でも、その執念が生きる原動力になる子もいるはずだ。

 重荷にならないのであれば、生きる力になるのであれば、そういう執念を背負ったっていい。「恨みにまみれてたっていい」んだよ。

 もちろん、物理的に復讐しちゃだめだけどね。誰かを傷つけたら、自分の人生もダメになるから。

「あいつら」はクズだ。クズには刺し違える価値なんかない。

 クズより上を行ってやれ。

 あと、意外と誰も注意してないんだけど、いじめられていても、絶対にやってはいけないことがある。

「あいつら」の側に立つこと。

 いじめから逃れるために、「あいつら」の仲間になって、他の誰かをいじめること。これはもう絶対にやっちゃだめだ。

 実際にネットにいるんだよ、そういう奴。自分がいかにいじめられてきたかを書いてるんだけど、その一方で、ものすごい差別発言を連発する奴。「いい歳こいて漫画やアニメなんか見てる異常者は強制入院してただちに脳の手術をするべき」とか「子供の人権を守るならロリコンを見つけしだい処分しなければならない」とか「体育会系の世界ではホモセクハラが日常茶飯事」とか「聖書とコーラン以外の全ての書物を焼却処分するべき」とか「進化論を信じる邪教徒は問答無用で処刑するべき」とか。

 そのくせ、自分はあくまで被害者だ、かわいそうなんだと主張しているのが気持ち悪い。自分がもう加害者になってるという自覚がないらしい。

 いじめられるのに嫌気がさして、いじめる側に回ったんだろうなあ。そりゃまあ、人を差別するのは、さぞ気持ちがいいだろうさ! でも、やっちゃいけないだろ。自分をクズに貶めてどうする。被害を広げてどうする。

 いじめられていたことは免罪符にはならない。

 いじめられる者の心の痛みを知っているなら、それがどれほど罪深い行為かも知っているはずではないか。

「あいつら」の側になったいじめられっ子を、僕は侮蔑する。

 僕が差別問題に敏感で、作品中で何度も外国人差別を題材にしたり、原発事故をめぐる被災者差別に腹を立てるのも、やっぱり少年時代のいじめ体験に少なからぬ原因があると思う。僕自身は在日でも被差別部落出身でも障害者でもないが、なぜか「差別」を受け続けた。差別する連中が、少しの心の痛みも感じることなく、笑いながら弱者を踏みにじるのを、身をもって体験した。

 だから「あいつら」の側には絶対に立たない。絶対に。

妖魔夜行 闇への第一歩』も、今まさに亜季と同じようにいじめを受けている誰かへのメッセージとして書いた。亜季は誰にも頼らず、努力によって自分の過去を乗り越え、幸せをつかむ。

 人生で嫌なことはいっぱいあった。自分に生きている価値があるのかと悩んだこともあった。だが、もうそんなことはどうでもいい。自分は一人じゃない。生まれてきて良かったんだ――心の底からそう思える。