ジラースのひみつ

 7月30日、東京都現代美術館にてテレビ番組の収録。

 8月11日からWOWOWプライムで一挙放送される『ウルトラマン』ハイビジョンリマスター版のPR番組。本編(1日5話ずつ放映される)の前後に、当時の出演者やスタッフと、『ウルトラマン』を見て育った世代とのトークが入るのだ。

 放映予定とトーク出演者は次の通り。

http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/101468/#intro

8月11日 1〜5話 遠藤秀紀×飯島敏宏

8月12日 6〜10話 山本弘×満田かずほ

8月13日 11〜15話 クリス・ペプラー×黒部進

8月14日 16〜20話 樋口真嗣×古谷敏

8月15日 21〜25話 遠藤秀紀×飯島敏宏

8月16日 26〜30話 樋口真嗣×古谷敏

8月17日 31〜35話 クリス・ペプラー×黒部進

8月18日 36〜39話 山本弘×満田かずほ

 というわけで、満田かずほ監督にお話をうかがってきた。僕が10才の頃に見ていた番組を作っていた人とトークができるなんて、感無量である。

 やっぱり怪獣マニアならみんな気になるのは、ジラースの出てくる「謎の恐竜基地」だと思う。

 僕は「ジラース」というのはてっきり「ゴジラ」のもじりで、ゴジラの着ぐるみを使うことが前提でつけられた名前だと思っていた。ところが満田監督によると、あれは脚本の金城哲夫氏によるネーミングで、「次郎主」という沖縄の方言なんだそうだ。つまり「ジラ」が一致してるのは偶然。脚本の段階ではゴジラを使う予定ではなかったという。

(後でwikipedia見たらちゃんと書いてありました)

 言われてみると、ジラースはもともとネス湖の怪獣という設定だし、劇中でモンスター博士がディプロドクス云々と言っているので、金城氏はディプロドクスのような首の長い恐竜を想定していたのではないかと思われる。

 そもそも何でゴジラの着ぐるみを使うことになったかというと、着ぐるみというのは高いので(僕の記憶では、当時の雑誌記事に「1体作るのに40万円」と書いてあったと思う。もちろん当時の物価でだ)、新人監督はなかなか着ぐるみを新調してもらえなかった。だから『ウルトラQ』『ウルトラマン』の満田監督の担当回では、ボスタング(没エピソードのクラプトンの流用)、ギャンゴベムラーの改造)、ザラガスゴモラの改造)、再生ドラコ、再生テレスドンなど、改造や流用が多いのだそうだ。「燃えろ栄光」のピーターと「小さな英雄」のジェロニモンは新調だったのだが。

 その「小さな英雄」も、本当は設定通り、ジェロニモンによって復活した何十体もの怪獣(それまでに使った着ぐるみの流用)をいっぺんに出したかったのだが、許してもらえなかったんだとか。それは僕も見たかった! 実現してたら、ギガスやグビラザラガスザンボラーゴルドンケロニアが入り乱れる大スペクタクルになってただろうに。もったいない。

 ジェロニモンっていわばボスキャラで、本当はすごく強い怪獣のはずなのに、なぜかレッドキングゴモラより人気がない。羽を飛ばすという能力があまり強そうに見えないせいかね?

 ちなみにウルトラマンジラースの格闘シーンは、光線の技比べをやったり闘牛をやったりウルトラマンが笑ったりスペシウム光線でとどめを刺さなかったりと、いつもと雰囲気がまるで違う。あれは満田監督と高野宏一特技監督が話し合って決めたことで、金城氏には「脚本に殺陣は書かないでくれ」と頼んでいたそうな。

 ゴジラは着ぐるみを傷つけずに東宝に返さなくてはいけなかったので、えりまきを付けて黄色く塗るぐらいの改造しか許してもらえなかった。誰がどう見てもゴジラなもんで、もういっそごまかすのをやめて、えりまきをむしり取って、ゴジラであることを見せてしまおう……ということになったらしい。

 あと、「謎の恐竜基地」で少年雑誌の記者が乗ってくる、角と牙の付いた変な車は何なのかとか(気になるでしょ、みなさん?)、何で「宇宙から来た暴れん坊」に青島幸男が出てたのかとか、子供の頃からのいろんな疑問が40ン年ぶりに解けました。いやー、訊いてみるもんだね。

 ウルトラマンのカラータイマーが点滅する時に石坂浩二のナレーションが流れるのには、ちゃんとした理由があったというのにもびっくり。当時はまだ白黒テレビが多かったので、「胸のカラータイマーが青から赤に変わり点滅を始める」というナレーションを入れないと、視聴者に色の変化が分からないからだと。言われてみればそうだ! うちも白黒で見てたよ。

 他にもここには書ききれない、面白い裏話がいっぱいなので、もっと知りたい人は放送を見てね。