『サンデー毎日』「暴走“ロリ男”はなぜ増える」
『サンデー毎日』9月30日号「相次ぐ連れ去り、監禁…暴走“ロリ男”はなぜ増える」より。
立て続けに起きた女児監禁事件。警察庁の犯罪情勢によると、昨年、未成年が被害者となった逮捕・監禁事件は79件で、一昨年に比べ12件増えた。また、13歳未満が被害者となった強制わいせつは1019件。2007〜09年に900件に減ったが、一昨年から再び1000件台に。強姦は09、10年は50件台だったが、昨年は65件に増えている。
本当かどうか、警察庁の犯罪情勢平成24年度版を見てみた。
http://www.npa.go.jp/toukei/seianki/h23hanzaizyousei.pdf
「子どもを主たる被害者とする犯罪」のデータは、このファイルの119〜122ページである。
>昨年、未成年が被害者となった逮捕・監禁事件は79件で、一昨年に比べ12件増えた。
実際の数字はこう。
(2010年) (2011年)
殺人 125 → 123
強盗 357 → 312
強姦 547 → 526
暴行 5,037 → 4,851
傷害 5,262 → 5,025
脅迫 295 → 276
恐喝 2,248 → 1,858
窃盗犯 223,980 → 198,793
詐欺 710 → 576
強制わいせつ 3,760 → 3,598
公然わいせつ 426 → 354
逮捕・監禁 67 → 79
略取・誘拐 148 → 117
見ての通りだ。確かに「逮捕・監禁」だけは12件増えた。しかし、それ以外はすべて減少している!
「強姦」「強制わいせつ」「公然わいせつ」などの数字を見れば、未成年者への性犯罪が増加していないのは一目瞭然ではないか。この記事を書いた菊地香という記者は、卑劣なことに、唯一増加した「逮捕・監禁」の数字だけを挙げて、読者を誤誘導しているのである。
>13歳未満が被害者となった強制わいせつは1019件。2007〜09年に900件に減ったが、一昨年から再び1000件台に。
図表4−12−(2)−6の罪種別被害発生件数を見ていただきたい。強制わいせつは平成14年(2002年)には1,815件、2003年には2,087件もあった。それがわずか4年後の2007年には半分の907件に減少している。その後、少しリバウンドして、2010年には1,063年になったが、2011年には再び1019件に減少した。
>強姦は09、10年は50件台だったが、昨年は65件に増えている。
これもピークは2003年の93件。それが2009年までに53件に減少。その後、やはりリバウンドして、2011年に65件になった。
「わいせつ目的略取誘拐」も、やはり2003年の56件がピークで、2005〜2011年には24〜30件の範囲に収まっている。
もっと大局的に見てみよう。このグラフは「少年犯罪データベース」から引用させていただいた。
ご覧の通り、昭和38年(1963年)には、小学生458人、未就学の児童92人が強姦の被害に遭っている。小学生以下に限定すれば、この年が戦後のピークである。
偶然だが、1963年というのは、日本初の本格テレビアニメ『鉄腕アトム』が放映開始された年でもある。
60年代末から犠牲者数は急降下。70〜80年代を通じて減少を続け、1990年代になって減少が止まる。以後、小学生の犠牲者は41〜70人の範囲で上下動を続けている。
統計を見る限り、子供をターゲットにした性犯罪は昔より確実に減っている。2003年頃に比べると、強制わいせつ事件は半分になった。1960年代と比べれば、強姦事件は1/10になっている。
「暴走“ロリ男”はなぜ増える」
この見出しに対する答えはこうだ。
「暴走“ロリ男”は確かにいる。だが、増えてなどいない」