だから落合信彦の言うことを信じちゃだめだってば

落合氏「移民受け入れで仏は古き美しい町並み失いつつある」

http://www.news-postseven.com/archives/20141023_280835.html

> イタリアではいま、シリアをはじめとするアラブ世界から一日6万人とも言われる大量の移民が入ってきている。

 1日6万人!? 1ヶ月で180万人? いくら何でも多すぎるだろ。

 ちなみに日本の入国者数は年間1036万人(もちろん大半は観光客だ)、1日あたり2万8000人だから、「一日6万人」だと、それをはるかに超えちゃってるよ。

 検索してみると、ニューズウィークの記事が見つかった。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2014/01/post-3167.php

> 反対に、12年にイタリアへやって来た移民の数は、前年比約10%減の32万1000人だった。

 やっぱりだ。1年間で32万人。1日あたり880人ぐらいだ。

 ちなみにイタリアにいる移民の多くはアラブ系ではなく、ルーマニア人、アルバニア人、モロッコ人が多いとのこと。

http://hirokijourney.blog35.fc2.com/blog-entry-605.html

 落合氏の文章はこう続く。

> 職を奪われるだけではない。移民の受け入れはその国の文化をも壊す。フランスに、バルビゾンという19世紀の画家ミレーが住んでいた古い町がある。ミレーが代表作「種まく人」に描いたような美しい田園風景がいまなお広がるこの町へは、パリの中心部から南へ1時間ほど車に乗れば着く。ところが、このバルビゾンへ向かう高速道路の壁には、いつの間にか、延々とアメリカのスラム街のような落書きが増えていたのだ。芸術とはおよそかけ離れた、ただの落書きである。

> 移民を受け入れることで、フランスは徐々に古き美しい町並みを失いつつある。

 その落書き、移民が書いたという証拠はあるの? そもそも高速道路の壁に落書きするってことは、高速道路を利用できて、なおかつ暇な奴のしわざだよねえ?

 さらにネットで検索してみると、フランスの落書きの多さに触れている文章がいくつか見つかった。 そのうちのひとつはこういうもの。

http://www.nippon.fr/ja/archives/120

>駅のホームだけではありません。電車そのものの落書きもひどいです。シートにも、ドアにも、ガラスには傷を入れて落書きが。そして最近 は電車の側面の大々的な落書きが目立ちます。かなりショッキングなので、待っている人たちも目が点になっていたりします。観光客の人にもイメージが悪そうな気がしますし。

>そこで、パリメトロの落書きについてのある記事を見つけました。

>3人の男性(19〜22歳)が公共物破損の容疑で取り調べにかけられたそうです。その男性達とは、昼間はウェイター、営業サラリーマン などをしていて、夜になると≪Jonks ≫、≪Sokle≫、≪ Skyz≫という名前を使って地下鉄や車両に落書きをしていたといいます。記事によるとまた、彼らは2005年の2月から2007年の12月の間にRATPとSNCFの組織網において243のスプレーの落書きをしたという(180 000ユーロの損害に当たる)。

>こういった落書きの犯人というのは若い人だけではなく、50代などの年配の人も多いんだそうです。こういった人たちにとって落書きは一 種のチャレンジで、人が近づけないようなところに落書きをするということで自分に挑戦するんだそうです(だからありえないような所に落書きがあるんです ね)。ある市の公務員の方の話によると、その市では年々落書きの数が増え対応に困っており、その相手が自分と同じ位の歳であることにまたあきれてしまうと いうことです。

 ……移民、関係なさそうですけど?

 さらに「フランス 落書き」で画像検索をかけて、実際のフランスの落書きを見てみたのだが、文字のほとんどがアルファベット、それもフランス語のようである。 ましてアラビア文字らしきものは見当たらない。

 厳密に言うと、落合氏は「移民の受け入れはその国の文化をも壊す」と書いているだけで、移民が落書きを書いたとは明言していないのだが、落書きの増加を移民と結びつけているのは明らかだ。

 僕が落合信彦氏の著作を信じなくなったのは、もう4半世紀近く前、PCエンジン版『サイバーナイト』の企画段階のこと。

 主人公たちを傭兵にすることになったもんで、傭兵に関する参考資料を買って読んだ。それが落合信彦『傭兵部隊』だった。

 あまりに嘘っぽい記述の数々にあきれ、「こんなもん参考にしちゃだめだ!」と思ったもんである。

 ちなみに『サイバーナイト ドキュメント戦士たちの肖像』の22ページに、「前に傭兵の生活をルポしたノンフィクションを読んだことがあるが、大笑いだったね」というくだりがあるのは、『傭兵部隊』に対する皮肉だったりする。僕はあの時、「著名な作家の本でもうかつに信用できない」ということを学んだのだった。

 実際、その後、落合信彦氏の著作(もちろん『傭兵部隊』も含む)の?がボロボロ明るみに出て、「ああ、やっぱりあの時の僕の印象は正しかったのか」と思ったものである。

 ちなみに、レビューを読んでみたら、落合氏を擁護している人(たぶん愛読者だろう)がいた。

>また、もし先生が本当にこの本で言う「嘘つき」であるなら、上記の辣腕仕事人たちがとっくに見限っている。マスコミは、そんなに甘い世界ではない。どんなに売れている雑誌でも欺瞞・捏造があれば、廃刊になる世界。でっち上げがまかり通るはずが無い。

>この本に書いてある事が本当なら落合氏は訴訟起こされまくりで「SAPIO」の連載も打ち切りになるはずです。盗作や捏造が大々的にまかりとおるほどジャーナリズムの世界は甘くはないはず。

 本を出し続けているんだから、書いてあることは本当に違いない、という理屈。だったら矢追純一氏や五島勉氏もみんな本当のことを書いてるんですね(笑)。

 いやー、メディアリテラシーというものを学んだ方がいいよ、ほんとに。