『怪獣文藝の逆襲』

『怪獣文藝の逆襲』

角川書店 2052円 発売中

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見届けよ。

世紀の大決戦がいま、幕を開ける

怪獣と特撮を愛してやまない作家、映画監督、気鋭のコンセプト・アーティストが大集結!!

希代の怪獣マニアたちの筆が生みだすオリジナル怪獣が、縦横無尽に暴れまわる、夢の競作集。

迫力に満ちたカバー絵を手掛けたのは、『GODZILLA』『ハンガーゲーム2 キャッチングファイア』『レ・ミゼラブル』『寄生獣』『進撃の巨人』『ターミネーター ジェネシス』ハリウッドで活躍するコンセプト・アーティストの田島光二。

ここでしか味わえない驚きと興奮を、ぜひご堪能あれ。

【本書に収録されている作品】

樋口真嗣「怪獣二十六号」…秘蔵の怪獣映画の企画書、本書で初公開!

大倉崇裕「怪獣チェイサー」…怪獣省のベテラン職員が直面した、いまだかつてない危機。

山本弘「廃都の怪神」…密林の奥深く、先住民に育てられた白人少年が遭遇した恐るべきモノとは?

梶尾真治「ブリラが来た夜」…突如現れた怪獣に呼応するように、血族に隠された戦慄の事実が明らかになる……。

太田忠司「黒い虹」…謎の転校生と奇妙なTVドラマ「世紀の大怪獣ドノポリカ」との意外な関係とは?

有栖川有栖「怪獣の夢」…幼い頃から夢を見る。血にまみれ、おぞましく、神々しい怪獣の姿を……。

園子温「孤独な怪獣」…園監督初の怪獣小説! 映画監督を夢見る貧乏青年が語る、知られざる怪獣映画とは。

小中千昭「トウキョウ・デスワーム」…東京の地下に巣食う巨大な生物はいったい何なのか?

井上伸一郎「聖獣戦記 白い影」…元寇に立ち向かう家清の前に現れた黒い影の正体とは。

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 怪獣小説のアンソロジーです。

 前に『怪獣文藝』という本が出た時に、「何でこの企画で僕に声がかからなかったんだ?」といじけたもんでしたが(笑)、今回はちゃんとお声がかかりました。

 僕の作品「廃都の怪神」は、アフリカ奥地の秘境を舞台に、野性の少年ティムが邪教集団の崇拝する怪獣と対決するという話。1996年にメディワークスから出たアンソロジー『ドラゴン殺し』のために書いた「密林の巨龍」と同じシリーズなんですけど、覚えてる人いますかね?

 時系列的にはこっちの事件の方が一年前という設定にしてます。(「密林の巨龍」ではティムは13歳、「廃都の怪神」では12歳)

 19年ぶりのシリーズ第2作ですよ。このシリーズ全部書けるのは、何年先になることやら。

 樋口真嗣さんの「怪獣二十六号」は、幻に終わった怪獣映画の企画。怪獣を番号で呼ぶなど、『MM9』と似てる設定ですが、実は『MM9』より前の企画なんだそうです。 大倉崇裕さんの「怪獣チェイサー」もやっぱり『MM9』っぽい世界観。僕は逆に、「山本弘だからどうせ『MM9』だろう」と予想する人がいるだろうから、わざとぜんぜん違う話にしました。

 もっとも「密林の巨龍」を読み直してみると、怪獣は白人文明の世界観とは異なる世界の存在なんで、その近くでは銃が使えなくなる……という、多重人間原理みたいな設定を使ってるんですよね。この頃から『MM9』っぽい発想してたんだな。

 KADOKAWA代表取締役専務の井上伸一郎さんの初の小説「聖獣戦記 白い影」は、元寇に怪獣がからむという歴史もの。ネタバレになるので詳しくは書けませんけど、クライマックスでみんな驚くはず。いやー、権利持ってる強みだなあ(笑)。

 実は昨年、お会いした時に、二人とも怪獣映画が好きなもんで、怪獣の話をさんざんしたんですよね。その時に、僕がぽろっと口にしたちょっとしたアイデアがあるんですが、後で井上さんに「あのアイデア使っていいですか」と言われて、「どうぞどうぞ」と返事しました。こんな見事な小説になるとは、感慨深いです。

 怪獣小説というジャンルはまだまだ可能性があって、アイデアしだいでもっといろんなバリエーションが生み出せると思うんですよ。現代日本にこだわることはない。前に『トワイライト・テールズ』で、アメリカやタイやコンゴを舞台にしましたけど、他にもいろんな国を舞台にしていいし、他の惑星や異世界を舞台にしてもいいはず。夢枕獏さんや宮部みゆきさんみたいに、時代ものにしてもいい。舞台の数だけ異なるドラマが描けるはずなんです。SFにもミステリにもホラーにもギャグにもラヴロマンスにもできる。

 他にも、僕はからんでませんけど、洋泉社から『日本怪獣侵略伝 〜ご当地怪獣異聞集〜』という怪獣小説アンソロジーも出るそうで、期待してます。今年は怪獣小説の当たり年になるかも?

日本怪獣侵略伝 〜ご当地怪獣異聞集〜