『MM9―invasion―』

 早いところではもう書店に並んでるかな? 『MM9』の続編『MM9―invasion―』が発売です。

 前作の表紙には、編集部の意向で怪獣は描かれなかったんですが、今回はもろに怪獣が表紙です。作中にで大暴れする怪獣6号(のちに「ゼロケルビン」という固有名がつきます)を、開田裕治氏がすごくかっこよく描いてくださいました。

 僕のイメージでは、6号はボスタング+ガラモン+ガンダー+ベムスター+ガゾートなんですが、この絵では白と黒の配色がゼットンっぽくて、さらに素敵ですね。

 ストーリーは――

 前作から6年後の2012年。眠りについたヒメを北海道に輸送しようとしていた自衛隊のヘリコプターが、謎の青い火球と衝突して霞ヶ浦に落下する。

 深夜、謎の声に導かれて霞ヶ浦に向かった高校一年生の案野一騎は、そこで復活したヒメと宇宙怪獣の戦いを目撃する。

 ヒメに憑依した地球外知性体ジェミーは、テレパシーで一騎に告げる。チルゾギーニャ遊星人が地球侵略を企んでいると……。

 ぶっちゃけた話、前作を書いた時は、あの世界に宇宙怪獣がいるかどうかは決めていませんでした。というのも「神話宇宙」という設定(当然、天動説的世界観のはずなんですが)の中で、他の惑星や地球外生物の存在をどう位置づけていいのか、まだよく分からなかったからです。だからとりあえず、宇宙怪獣の存在には触れないようにしました。

 また、続編を書くつもりはまったくありませんでした。あの結末の後では何をつけ足しても蛇足になる、と思ったからです。それに、前作と同じことをやるのでは、続編の意味がありません。続編を書くのなら、まったく違う話、前作を上回る内容でなければいけない、と。

 続編の構想を思いついたのは2年前のことです。

 ある同人誌でも書きましたが、実は『MM9』はドラマ版より先にアニメ版の企画があったんです。いろいろあって現在はペンディングになってますけど。

 しかし、2クールぐらいのテレビアニメにするとなると、原作だけではまったく分量が足りません。だいたい原作の1話分がテレビの30分ぐらいの分量ですから。

 そこで最初の打ち合わせの後、シナリオの叩き台として、26本分のプロットを自分で書いてみました。2009年の1月のことです。なるべくバラエティに富んだ内容にしようと、ホラーとかコメディとか、いろんなパターンの話を考えました。

 ちなみに、この時にテレビアニメ用に考えたプロットのうちの3本は、かなりアレンジして、『ザ・スニーカー』に連載された『MM9 怪獣のいる風景』に流用しています。(こちらもいずれ単行本化の予定。現在、加筆中)

 その26本のプロットの中に、邪悪な異星人が地球侵略のために宇宙怪獣を送りこもうと企んでいて、それを知った善意の精神生命体が、地球人の女性に憑依して警告を発する――という話があったんですね。ヒントになったのは『三大怪獣 地球最大の決戦』と『ウルトラQ』の「宇宙指令M774」です。

 さらに、その精神生命体が二度目に地球にやって来た時、ヒメに憑依し、ヒメの頭が良くなって言葉を喋れるようになる……という展開も思いつきました。

 そこで、はっと気がつきました。

「これ、小説に使える!」

 さらに、異星人や宇宙怪獣が存在する理由や、なぜ異星人が怪獣を使って侵略してくるのか、といった謎も、多重人間原理を応用すればきれいに説明できることにも気づきました。しかも、すごく面白い話になりそうなのです。

 これはもう書くしかない!

 しかし、前作と同じく気特対が主人公では、作品の雰囲気も前作に似てしまいます。そこで案野悠里の息子の一騎(前作では小学生でした)を主役にし、開き直って徹底的にライトノベル的展開にしてやろうと思いつきました。

 ですから今回、一騎とヒメと掛け合いとか、一騎のクラスメートの亜紀子との三角関係とか、ベタベタなラブコメ要素が大きなウェイトを占めています。いやもう、書いてて楽しかったですね。一騎がそのうちフォークでヒメを刺しそうで(笑)。

 もちろん、怪獣も出てきます。

 前作での心残りは、怪獣の都市部での大暴れと、自衛隊とのバトルという、怪獣ものの定番展開を書けなかったことです。今回、クライマックスでは東京に宇宙怪獣6号が出現、ド派手なバトルを繰り広げます。このへんも自分ですっかり楽しんでしまいました。

「ああ、僕が書きたかったのはこれだったんだ!」

 と思ったもんです。

 ちなみに、東京には何度も足を運んで、バトルの舞台になる場所を選びました。

 フィクションの中で初めてあそこを破壊したり、これまで怪獣が襲ったことのないあそこでラストバトルをやったり、いろんなアイデアを盛りこんで、燃える展開になったと自負しています。

 僕と同じく、怪獣の好きな方におすすめします。