星雲賞受賞

「そうか、星雲賞か。いいなあ……」

「あなたも受賞してるでしょ?」

「『トンデモ本の世界』と『トンデモ本の逆襲』でな。でも、あれは僕一人が書いた本やないし、ノンフィクション部門やし。やっぱり小説で獲りたいよ」

 それから僕は、ずっと気になっていたことを――未来の僕が教えてくれなかったことを訊ねた。

「なあ、『神のメッセージ』――じゃない、『神は沈黙せず』か。あれは星雲賞、獲れたんか?」

「正直に答えていいの?」

「というと、あかんかったん?」

「二〇〇四年度の星雲賞日本長編部門受賞作は、小川一水さんの『第六大陸』」

「小川さんかーっ!?」

 僕は思わず、その場にしゃがみこんでしまった。〈ソムニウム〉で親しく話していたが、まさかライバルだったとは。

「『神は沈黙せず』もノミネートはされたんだけどね」

 僕は顔を上げた。「じゃあ……じゃあ、日本SF大賞は?」

押井守監督の『イノセンス』」

「『SFが読みたい!』は?」

「一位は冲方丁マルドゥック・スクランブル』。二位は『第六大陸』。『神は沈黙せず』は三位」

「ウブカタ……?」

「一九九六年に一九歳でデビューした人。今はライトノベルを書いてる」

「まだ二〇代? そんな新人にまで負けたんか!?」

 ショックだった。あの小説は面白いという自信があって書きはじめたはずだった。結局は中断したものの、途中までずいぶん苦しんで書いた。完成したら星雲賞ぐらい獲れて当たり前だと思っていたのに。

――『去年はいい年になるだろう』11章「雨の松江城

 いつもはSF大会で発表される星雲賞ですが、今年は大会の2か月前に発表になりました。

http://www.sf50.jp/award.html

【日本長編部門(小説)】

『去年はいい年になるだろう』

著者:山本弘 発行:PHP研究所

【日本短編部門(小説)】

『アリスマ王の愛した魔物』

著者:小川一水発行:早川書房SFマガジン2月号」掲載

【海外長編部門(小説)】

『異星人の郷』

著者/訳者:マイクル・フリン/嶋田洋一 発行:東京創元社

【海外短編部門(小説)】

『月をぼくのポケットに』

『宇宙開発SF傑作選 ワイオミング生まれの宇宙飛行士』(ハヤカワ文庫SF)収録

著者/役者:ジェイムズ・ラヴグローヴ/中村融発行:早川書房

【メディア部門】

『第9地区』

監督:ニール・ブロムカンプ

製作総指揮:ケン・カミンズ、ビル・ブロック

製作:ピーター・ジャクソン、キャロリン・カニンガム

【コミック部門】

鋼の錬金術師

著者:荒川弘

発行:スクウェア・エニックス

【アート部門】

加藤直之

【ノンフィクション部門】

『サはサイエンスのサ』

著者:鹿野司

発行:早川書房

【自由部門】

探査機「はやぶさ」(第20号科学衛星MUSES-C)の地球帰還

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

 というわけで、「星雲賞が獲れなくて悔しかった」という想いをぶつけた『去年はいい年になるだろう』が、今年の星雲賞を受賞してしまいました(笑)。長いこと小説を書いてきたけど、初めての星雲賞で、感無量です。

 正直言って、『SFが読みたい!2011版』での順位が低かったもんで、「今年は無理だろうな」と思ってたんですけど、意外にも逆転してしまいました。

 2004年度は日本長編部門を受賞、作中にも登場していただいた小川一水さんが、今回は日本短編部門で受賞というのも、面白い縁であります。

 言うまでもなく、この作品は僕一人の力で書けたものではありません。小川一水さんをはじめ、作中への出演を許諾いただいた、あるいはアイデアを提供していただいた方々、みなさんのご協力のおかげです。執筆中に亡くなられた志水一夫氏、出版後に亡くなられたはぬまあん氏も含めて、ここにあらためて感謝の意を表します。

 秋田みやび、石原美紀子、植木不等式小川一水開田あや開田裕治葛西伸哉、加藤ヒロノリ、かに三匹、唐沢俊一、桐生祐狩、酒井和彦、シ、篠谷志乃志水一夫(故人)、主藤雅章、白山隆彦、杉並春男、田中公侍、友野詳、中川善之、新田五郎、はぬまあん(故人)、原田実、稗田おんまゆら松尾貴史、松岡秀治、皆神龍太郎眠田直、森本有美、安田均、山本真奈美、山本美月(アイウエオ順・敬称略)

 ありがとう! そしてありがとう! 

\宣/