『Dororonえん魔くんメ〜ラめら』
AMAZONでブルーレイ&DVDを検索してたら、けなしているレビューがあった。
http://www.amazon.co.jp/dp/B004VSNC66/
>昔、再放送されているドロロンえん魔くんを見て感動したことを覚えています。その感覚で見たら大失敗しました。
>全然面白くない。
>雪子姫など女性キャラがやたらと色気のあるシーンが多く視聴者に媚を売っているようでガッカリ。
>ブヒアニメはその手の専門アニメがあるのだからそちらに任せていればいい。
>リメイクするなら流行に流されずこの作品の良さをもっと引き出せたはず。
>あとOP。戦隊ものみたいで違和感あり過ぎ。著名な人が歌っているのかは知らないけどこの作品にはまったく合っていないと思った。
>自分の中で良い思い出だった作品が、こんなゴミとして世に出たことが残念で仕方がありません。
おーい(笑)。
違うよ! こっちの方が原作のイメージに忠実なんだよ!
『ドロロンえん魔くん』って、もともとこういう話なんだよ!
今期のアニメ、『花咲くいろは』とか『あの花』とかも良かったんだけど、実はテンションがいちばん上がったのがこの作品だった。
正直、放映開始前は、「何で今頃『えん魔くん』なんだよ」とバカにしてたんだけど、イヤハヤなんとも、ここまで盛り上がるとは想像もしなかった。
『タイバニ』も米たにヨシトモ氏がコンテを切った第一話がいちばん面白かったし、やっぱりこれは米たに監督の才能なんだろうな。
あ、未見の方に言っておきますが、このアニメ、むちゃくちゃくだらないです(笑)。とてつもなく下品です。エロいです。
でも、そのくだらなさに全力投球しているところがいい!
これを見ていると『そらのおとしもの』とか『To LOVEる』に欠けてたのは「勢い」だというのがよく分かる。ギャグのひとつひとつはしょーもないんだけど、それがすごい密度で機関銃のように打ち出されるもんで、しらけてる余裕がないのだ。変にシリアスとか感動とかを混ぜようとせず、下品なギャグに徹していることに、逆に好感が持てる。
個人的にいちばん好きなのは、第7話のすってん童子の話。いちおう原作にある話なんだけど、ここまで暴走はしてなかったはず。冒頭、世界中の人間や動物がみんなひっくり返ってるというものすごいビジュアルでいきなり大爆笑、最後は珍しく感動的に終わるかと思いきや、ひどいオチで締める。参った。
炎天狗と寒天狗の話もすごかった。あの短い話をどうアレンジするのかと思ってたら、やっぱり後半が原作から離れて大暴走。「炎」と「氷」でシンメトリカルドッキングという、米たに監督のセルフパロは、まったく予想外でひっくり返った(いや、えん魔くんの必殺技はゴルディオンハンマーっぽいなとは思ってたけど)。
他にも、山口勝平に『ジャイアントロボ』のセルフパロをやらせたり、原作では一瞬でやられたエビ天狗・イカ天狗・トコロ天狗が「下駄マシン」に乗ってきたり(OPで3人が「ゲッター走り」してる!)、とことんフリーダム。「ギルギルガンボングランゲンピグドラゴノロンザウルス」という名前が覚えられなくて、「ジェットジャガーチタノザウルス」とか「エロトピアヘイボンパンチザウルス」とかみんなが勝手なことを言い合っているのもおかしかった。
あと、炎天狗と寒天狗の声が、大塚周夫と銀河万丈だったのはシビレた。
この番組、ゲスト声優がけっこう豪華なんである。石丸博也、飯塚昭三、家弓家正、大塚芳忠、檜山修之、石田彰、岩田光央、加藤清三……第4話なんて、三ツ矢雄二と日高のり子(タッチと南)だったし。すごい贅沢な使い方してる。
AMAZONではこんなことを言ってる人もいる。
>個人的な意見で申し訳ないが、一言いいたい。
>大人版もそうだけどさ。
>シャッポじいの声優が、昔のままなら買ったのに…
>ヤッ○ーマンを見習ってくれ。
えええええーっ!?
シャポーじいの声が滝口順平じゃないのが不満?
どんだけ贅沢なんだよ。
エロいシーンも毎回必ずある。何せ、「セクハラ」なんて言葉がまだ存在していなかった時代の作品ですから。そりゃあもう、アグネスや石原慎太郎にケンカ売ってんじゃないかと思えるほど(笑)。
先の炎天狗と寒天狗の話でも、原作の「まっかっかだー」をちゃんとやってくれたのは嬉しかった。そうだよ! あそこはカットしちゃだめなんだよ!
しかし、ここまで堂々とやっちゃうと、逆にいやらしくないんだよね。艶靡ちゃんなんて常に全裸なもんで、見てると感覚がマヒしてきて、逆に服を着てるシーンの方がエロく感じられたりする(笑)。
でもって、毎回毎回、詰めこまれている、すごい量のおっさんホイホイ。挿入歌が「老人と子供のポルカ」とか「学生街の喫茶店」とか「燃えろいい女」とか「ハチのムサシは死んだのさ」とか、もー泣けてくる。
背景の看板に「おはようございますの帽子屋」と書いてあったことも。
毎回、OPの前にやるなつかしの番組のパロディも楽しみ。『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』『スペクトルマン』『鉄腕アトム』『マグマ大使』……『サンダーバード』のパロの時は、1号役の雪子姫が上昇する時に、ちょっとだけ横に回転するのが芸コマである。
なんか完全に「若い奴は分からんでいい」というシフトになってないか?
最終回もすごかった。
いきなり『幻魔大戦』パロや『チキチキマシン猛レース』パロで幕を開け、その後は怒涛の永井豪パロの連発。『獣神ライガー』とかまで!
これまでも『マジンガーZ』とかのパロはいろいろやってたけど、残ってたネタを一挙に大放出した感じである。
でもって、クライマックス。
よっしゃあ、野沢雅子キターッ!!!!!!
豪華ゲスト声優陣の中に、旧・えん魔くん役の野沢雅子がいないもんで、「最終話のために温存してるのでは?」と予想してたんだけど、その予想が見事に的中して、思わずガッツポーズ。
しかし、旧・雪子姫役の坂井すみ江まで呼んでくるとは予想外。声がすっかりお婆ちゃんになっちゃってて……まあ、38年前だからなあ。
とっくに引退してたかと思ってたら、まだ現役でした。そうか、『HEROMAN』のジョーイのお祖母ちゃんか! 気がつかなかった!
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E4%BA%95%E5%AF%BF%E7%BE%8E%E6%B1%9F
まあ、あまりにカオスすぎて、結局、どういう話だったかよく分からなかったりするんですが(笑)。そういういいかげんなところも含めて、永井豪の世界を見事に再現していたと思うのである。
古いマンガの映像化、昔のアニメのリメイクというと、変に現代風にアレンジしようとして原作をぶち壊したり、原作とぜんぜん別物に改変してしまったり、あるいは逆に原作を忠実になぞっただけのつまらないものになっちゃったり、失敗作が死屍累々なのだけど、『Dororonえん魔くん メ〜ラめら』はその罠に陥らなかった。
原作を(派生作品まで)しっかり読みこんだうえで、その精神を踏襲し、カットしてはいけない重要な部分は残し、なおかつ拡大・暴走させてみせた。
原作リスペクトの最も良い例と言える。
これからこういうリメイクものを創る人間は、『Dororonえん魔くん メ〜ラめら』を教科書にすべきだと思う。
もちろん反面教師は映画版『デビルマン』(笑)。
両者をそれぞれ原作と比較してみると、「何をすべきか」「何をやっちゃいけないか」がよ〜く分かると思うんだよね。