『詩羽のいる街』/飛べないハードルを負けない気持ちで

 山本弘作品の中で、世間的に評価が高いものは何だろう? 疑問に思って、mixiのレビューを元に調べてみた。

・レビュアー数が20人以上

・小説のみ

 という条件で、満足度の大きい順に並べてみると、こういう結果になった。

●アイの物語 (文庫)

 平均 4.63点(74人)

●詩羽のいる街

 平均 4.49点(104人)

サーラの冒険6 やっぱりヒーローになりたい! (文庫)

 平均 4.43点(23人)

●アイの物語

 平均 4.35点(198人)

●神は沈黙せず

 平均 4.27点(180人)

●神は沈黙せず〈下〉(文庫)

 平均 4.13点(43人)

●神は沈黙せず〈上〉(文庫)

 平均 4.00点(69人)

●MM9

 平均 4.00点(84人)

●地球移動作戦

 平均 3.97点(37人)

●アリスへの決別 (文庫)

 平均 3.96点(27人)

●審判の日

 平均 3.95点(20人)

●MM9 (文庫 )

 平均 3.93点(45人)

●闇が落ちる前に、もう一度 (文庫)

 平均 3.90点(30人)

●去年はいい年になるだろう

 平均 3.83点(42人)

●まだ見ぬ冬の悲しみも

 平均 3.81点(21人)

シュレディンガーのチョコパフェ (文庫)

 平均 3.81点(42人)

 というわけで、『アイの物語』『詩羽のいる街』『やっぱりヒーローになりたい!』がトップ3で、『神は沈黙せず』『MM9』『地球移動作戦』がそれに続くという結果になった。僕の自己評価とそんなにずれていなくて、ちょっとほっとしている。

 しかし『アイの物語』の場合、文庫の点数は高いけど、単行本と文庫の点数×人数を合わせて平均すると4.43になる。つまり、実質上、トップは『詩羽のいる街』なんである。

『詩羽』は3年前に出た本だけど、今年になってからもけっこうレビューが書かれている。ネットでも検索してみたことがあるんだけど、ブログなどでは「○○さんからすすめられて読んだ」というパターンが目立つ。どうも、口コミでじわじわ人気が広がっているようなのだ。

 どういう話かご存じない方はこちらをどうぞ。

詩羽のいる街

 今度、その文庫版が出ることになった。

 ゲラチェックのために久しぶりに読み返したんだけど、やっぱり面白いわ、これ(笑)。 思わず読みふけっちゃったよ。

 冒頭の、TCGのカード交換会に集まった子供たちの描写からして、実に活き活きしているが、その後もあれよあれよという間に、語り手が詩羽につき合わされていろんな人と出会い、いろんな体験(原理的には可能だけど日常的にはまず起きないことばかり)をするもんで、飽きる暇がない。 架空のマンガ『戦場の魔法少女』『ガールズ・テリトリー』を縦糸として、4つの話がゆるく結びついていて、最終話では、それまでに出てきたあらゆる要素が、街全体をボードとして使った巨大なゲームに収束してゆく……。

 何だこれ。こんなもん何で書けたんだ、3年前の自分?

 頭を抱えた。やばい。今書いてる『輝きの七日間』や『UFOはもう来ない』と比較すると、リアリティも人物描写も話の運び方も、格段に違う。 『詩羽』の方が圧倒的に上手い。

 3年でレベルが落ちてるのを痛感する。

 今のところ『詩羽』が僕の最高傑作であることに何の不満もないし、むしろ誇りなのだけど、これに安住してちゃだめだよなあ。 いつか『詩羽』を超えるものを書かないと。

 でも高いハードルだよなあ。どうすれば超えられるんだ、これ。

 ちなみに文庫版の解説は有川浩さん。なぜか分からない人は『レインツリーの国』を読むように。