「あなたの知らないマイナー特撮の世界part1 」ご報告

 遅くなりましたが、先月のイベント「あなたの知らないマイナー特撮の世界part1」についてのご報告。

http://hirorin.otaden.jp/e263835.html

「はたして70年代の第2期怪獣ブームまでたどり着けるかなー?」と思ってたら、案の定、ネタが多すぎて、2時間20分話して、ようやく1964年まででした。『ウルトラQ』にさえたどり着かなかった! すみません。次回は第1期怪獣ブームの話がメインになります。

 イベントで紹介した写真や動画、いろいろ。この他にもいろんな映画やテレビ番組を紹介しました。

 

メトロポリス』の撮影風景。ロボットの中にブリギッテ・ヘルムが入ってるという話は本当だったんだ!

 おそらく世界初の女性スーツアクター。着ぐるみのこの形状からすると、たぶん中は全裸に近い格好だったんじゃないかと思われます。ほとんど拷問ですな。

 ロボットの「マリア」(実は作中ではロボットに名前はない。人間の女性・マリアに化けるから、便宜上「マリア」と呼ばれている)は劇中では前面しか映らず、背面の形状が不明。熱がこもるのを防ぐために、背中が開いてたんじゃないかという説もあります。

 1936年のイギリス映画『来るべき世界』に出てくる未来のヘリコプター。いいデザインです。

 そもそも世界最初のヘリコプター、フォッケウルフ Fw61が飛行するのは1937年。つまり本物のヘリコプターはこの時代にまだない。まさに想像力が生んだ「未来メカ」です。

 ストーリーはかったるいけど、後半の未来都市建設シーンのミニチュア・ワークは今見てもすごい。『サンダーバード』を作ったスタッフは、子供の頃、こういうのを見てたんでしょうね。

 1938年の日本映画『江戸に現れたキングコング』。

 面白そうな映画だけど詳細は不明。おそらくフィルムは現存していないと思われます。このポスターからすると、巨大怪獣じゃなく等身大のように見えるんですが……。

The Mysterious Island (1929) Fragment

http://www.youtube.com/watch?v=KJ4XEmL-8vk

 ジュール・ヴェルヌの『神秘島』は、『SF巨大生物の島』など、何度も映画化されています。これは1929年のサイレント映画。日本では1932年に『竜宮城』という題で公開されているとか。

 原作と違うのは、潜水艦(ノーチラス号か?)で海底に降りていったら、そこに海底人の国があるということ。海底人が何百人もぞろぞろ出てくるんですな。けっこう金かかってる?

 さらに、海底人の守り神らしき巨大怪獣も登場! ワニにひれ付けただけだけど。もしかして、これが史上最古の「トカゲ・ワニ特撮」なのかな?

Deluge (1933)

http://www.youtube.com/watch?v=kAFQcEnUxhs

 日本では『世界大洪水』という題で公開。全世界を大地震と洪水が襲い、文明が破壊されるという話。

 大がかりな特撮シーンはこの4分間のみですが、ニューヨーク壊滅の一大スペクタクルには圧倒されます。ビルの崩れ方なんか、ある種の美学すら感じさせますね。

 これは映画の最初の方のシーンで、後は生き残った人々のドラマが描かれるんですが、特撮ファン的にはそのへんはどうでもいいです(笑)。

The Thief of Bagdad (1940) Trailer

http://www.youtube.com/watch?v=QXqFLiO8ATQ

 1940年の『バクダッドの盗賊』。日本での公開はかなり遅く、1951年。(戦争があったから)

 これは予告編だけど、すでにパブリックドメインなので、全編、YouTubeで見られるし、日本でも廉価版のビデオが出ています(僕は280円で買いました)。

 今見ても話の展開が早くて飽きないし、特撮シーンも多いです。冒頭の帆船からして、よく見るとミニチュアなんですね。

 ビンの中から出てくる魔神ジニーとか、少年盗賊が潜入する異教の神殿のミニチュアとかもすごいけど、いちばん不思議なのが空飛ぶ馬。たぶんブルーバック合成だと思うんだけど、ものすごく大きなブルーホリゾンドの前で馬を走らせたのかな?

 他にも『雨ぞ降る』とか『悪魔の人形』とか、パブリックドメインになった古い映画の特撮名シーンだけ集めたDVD、誰か出してくれませんかね。安上がりにできると思うんだけど。

Gatorsaurus vs. Tegudon

http://www.youtube.com/watch?v=upBlYi0PnJo

 やはり1940年の『紀元前百万年』(『バクダッドの盗賊』と同じく、日本公開は1951年)より、トカゲとワニの壮絶な格闘シーン。今じゃ動物愛護団体が許してくれません。このシーンはその後、いろんなB級映画に流用されることになります。

 格闘シーン自体もすごいけど、その後の、瀕死のトカゲの横を歩いていくシーンが上手いなあ。

 言うまでもなく『恐竜100万年』(1966)はこの映画のリメイク。最初に出てくるのがコマ撮りの恐竜じゃなく本物のトカゲなのは、この映画へのオマージュでしょう。

 アーウィン・アレンの『失われた世界』(1960)の中にも、トカゲとワニの格闘シーンがあります。これも『タイム・トンネル』や『原潜シービュー号』に流用されておりました。

 そう言えば、お客さんの中に「トカゲとワニの出てくるシーンだけ見たい」と言ってた女の人がいました。「トカゲ・ワニ特撮特集」というのも面白いかも。『地底旅行』とか『大蜥蜴の怪』とかのトレーラーも集めて。

 他にも、たぶんパブリック・ドメインじゃないのでおおっぴらには言えないんですが(笑)、『縮小人間ハンター』World of Giants とか『宇宙探検』Men Into Space といった50年代のSFドラマも、YouTubeに上がってます。

 『縮小人間ハンター』は15センチの小人になってしまった諜報員メル・ハンターが、相棒のブリーフケースに潜んでいろんなところに潜入するという番組だそうです。明らかに『ロンドン指令X』の元ネタですね。細部の描写が凝ってて、真面目に作ってる印象です。猫に襲われるのは縮小もののお約束ですね。

 『宇宙探検』の方は、IMDBのエピソード・リストで見ると、 第1話で月周回、第2話で月着陸、第3話で宇宙ステーション建設、第4話で月面基地建設、第5話で原子力ロケットのテスト……と、宇宙開発を大真面目に描いていたようです。ちなみに作られたのは1959年、つまり人間がまだ宇宙に飛び出す前。

 脚本家の名前を見ると、『SF巨大アメーバの惑星』『冷凍凶獣の惨殺』のイブ・メルキオール、のちに『将軍』を書くジェームズ・クラベル、『アウター・リミッツ』のメイヤー・ドリンスキー、『人工衛星物語』のデヴィッド・ダンカン、「今日も上天気」のジェローム・ビクスビイなど、知ってる名前がぞろぞろ出てきてびっくり。そうか、ビクスビイって『スター・トレック』の前はこんなの書いてたんだ。

 特撮の歴史、調べれば調べるほど泥沼です。