『パシフィック・リム』と『RWBY』
『パシフィック・リム』、初日の午前中に観てきた。
途中までは割と地味な展開が続くけど、後半の香港防衛戦のあたりからどんどん盛り上がる。
仲間の危機に駆けつけるジプシー・デンジャーのかっこいいこと!
香港の街中で、巨大怪獣と巨大ロボットがビルを盛大にぶち壊しながら、ガツンガツン殴り合う!
これまで日本の怪獣映画やロボットアニメがさんざんやってきたことのはずなのに、こうして金かけて真面目にきっちり映像化したものを見せつけられると、新鮮な驚きだらけだ。
公開前から『エヴァンゲリオン』とか『ジャンボーグA』とか『マジンガーZ』とかいろいろ言われてたが(設定的にいちばん似てるのは『ゴーダンナー』だと思うんだけど)、実際に見てみると、『ガメラ 大怪獣空中決戦』への明らかなオマージュとか、探せばいろんなネタがちりばめられている。
しかし、表面上のパロディじゃなく、それら日本作品の魂が作品の中にきっちり溶けこみ、オリジナル作品として昇華されている。
特撮以外で注目したいのは、マコの少女時代の回想シーン。「小さな女の子が巨大怪獣に追われて逃げる」という場面が、芦田愛菜の演技力によって、リアルに仕上がっている。この子、この若さで、よくこんな演技できるな。
映画全体を見ても、人類が追い詰められ、滅亡の縁に立たされているという重苦しい雰囲気が、話を盛り上げていた。
難点を挙げるなら、夜間や水中のシーンが多くて、怪獣やロボットがはっきり見えにくいこと。昼間の戦いももっと見てみたかった。
あと、クリムゾン・タイフーンはもっと活躍してほしかったな。あれのギミックがいちばん面白いんだもの。
はっきり言おう。これは日本の「怪獣文化」「ロボ文化」の危機だ。
だって、今の日本じゃこれ、作れないよ。
仮にこの映画のおかげで怪獣ブームが来て、また東宝がゴジラ映画作ったとして、それがいつもの平成ゴジラ・シリーズみたいな水準の作品だったら……って想像してごらんよ。情けなくなるから。
予算の問題だけじゃない。怪獣を縦まっぷたつにするシーンとかも、昔は『ウルトラマンA』とかでやってたけど、残酷な描写がいかんとかで、最近はやらなくなった。好きなんだけどな、バーチカル・ギロチン。
言ってみれば、そうした今の日本の映画界・テレビ界が忘れてしまった精神を受け継いだのが『パシフィック・リム』なのだ。
これから、怪獣映画は何を作っても、『パシフィック・リム』と出来を比較されることになる。かと言って、これを超えるものを日本人が作るのは、とてつもなく難しいだろう。
もしかしたら、優れた怪獣映画を作れるのは外国人ばかりになり、もう「怪獣」「巨大ロボ」は日本の誇る文化じゃなくなってしまうかもしれない。
初回は字幕版だったが、後で日本語吹き替え版も観た。杉田智和の「ロケットパーンチ!」も良かったけど、司令官の玄田哲章はまさにハマリ役だし、林原めぐみ、古谷徹、三ツ矢雄二、池田秀一、千葉繁、浪川大輔と、『エヴァンゲリオン』『ガンダム』『コン・バトラーV』『トランスフォーマー』などロボットアニメに縁のある声優を集めたのが嬉しい。特に古谷徹のニュートンが実に上手くて聞き惚れる。ただハーマン役の三ツ矢雄二だけは、歳のせいかちょっと舌が回っていないのが気になった。
やっぱり声は大事だなあ……と、『風立ちぬ』を観た後なんでよけいにそう思う(笑)。
もうひとつ、今、僕がハマってる作品が、先日のMMD杯で知った『RWBY』というアニメ。
ニコニコ大百科によると、
http://dic.nicovideo.jp/a/rwby
>様々なゲーム動画やマシニマ(FPS等のグラフィックエンジンを用いて制作する動画のこと)、自作アニメーションや実写映像等を世に送り出してきたRooster Teeth Productionsが、『Dead Fantasy』等を手がけた人気アニメーターのMonty Oum氏を迎えて企画・制作したオリジナルアニメーション作品。
>2012年11月に最初のトレイラー「Red」、翌年2月に「White」、3月に「Black」、6月に「Yellow」が発表され、7月18日に待望のEpisode1「Ruby Rose」が発表された。公開はRooster Teeth公式サイトとYouTubeの専用チャンネルにて行われている。
おおっ、あの『Dead Fantasy』作った人か!?
まだ観てない人は観た方がいい(検索すれば一発で出る)。『デッド・オア・アライブ』と『ファイナル・ファンタジー』の女性キャラたちが壮絶なバトルを繰り広げるCGアニメ。アクションの組み立て方が凝りに凝っていて、何度観ても楽しめる。
その作者がいよいよ二次創作じゃなく、オリジナルに乗り出してきたのだ。しかもバリバリの日本アニメ風の美少女キャラで!
こんなすごいものを最近まで知らなかったのは、我ながら不覚だった。
まず観たのが4本のトレイラー。
RWBY "Red" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=pYW2GmHB5xs
RWBY "White" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=Vt9vl8iAN5Q
RWBY "Black" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=ImKCt7BD4U4
RWBY "Yellow" Trailer
http://www.youtube.com/watch?v=QCw_aAS7vWI
4人の女の子のイメージ、武器や戦い方のコンセプトがみんな違う。武器に魔力の弾丸をリロードするのはやっぱり『なのは』かなとか、たぶん『ソウルイーター』も見てるよなとか、ちょっと『デビルメイクライ』っぽい?とか、いろんな日本製のアニメや格闘ゲームの影響は指摘できるけど、それらを吸収して、一段とすごいアクションに仕上げている。つーか、日本のアニメでもここまで見せてくれるのはなかなかないぞ。
やっぱりいちばんしびれるのがルビーのアクション。大鎌を振り回す女の子とか、銃にもなる接近戦用武器というのはよくあるけど、発射の反動で敵をぶった斬るのが最高に快感。
4本とも素晴らしくて、何回観直したことか。『Dead Fantasy』で培ったモンティ・オウムの演出の才能が、存分に発揮されている。
なんかもう、「美少女バトルもの」の完成形を提示されちゃったって感じだ。
その後、本編も見た。
ハードな戦闘が満載だったトレイラーとは対照的に、こっちはわりと脳天気な学園コメディ。それでも第1話の魔法バトルがやっぱりかっこいい。
http://www.youtube.com/watch?v=-sGiE10zNQM
現在は7話まで公開中。しばらくは学園での話が続くらしい。
武器フェチで人づき合いが苦手なルビーは、オタク心をくすぐるキャラ。
おとなしいイメージかと思っていたワイスが、実は典型的な高飛車お嬢様キャラだったというのは意外。お嬢様キャラ定番の「これで完璧ですわ、おほほほ」妄想まで(笑)。で、性格の合わないルビーとの掛け合いが、やっぱり定番なんだけどすごく楽しい。
暗い過去のありそうなブレイク。やっぱりあの不自然なリボンは獣耳を隠しているのか? 3話でヤンとルビーに読書を邪魔された時のツンなリアクションが、個人的にツボにはまった。
そして、かわいい顔してやることがえげつないヤン。その落差がやっぱり魅力的。
あと、男性キャラでは、ジョーンくんの空回りとヘタレっぷりが、逆に好感持てちゃうんだよね。
しかし、こいつらほんと、徹底的に日本のアニメ研究しやがったな。
『ティーン・タイタンズ』とかだと、日本のアニメを取り入れようとしてるけど表面的な模倣にとどまっているぎこちなさがもどかしく感じられたんだけど、『RWBY』に関してはまったくそれがない。ごく自然に「日本のアニメ」として見れる。
今、日本のどのTVアニメよりも、『RWBY』の更新が待ち遠しい。
『パシフィック・リム』もそうだけど、日本の作品に影響を受けたクリエイター(ギレルモ・デル・トロはメキシコ人、モンティ・オウムは東洋系アメリカ人)が、日本人以上のものを創ってきてるのは驚異である。いや、脅威と言うべきか。
うかうかしてられないぞ、日本人。