盗作されました〔5〕

 @ichinoseyayoiの最も大きな問題は、ビブリオバトルを批判してるわけじゃない」と言いつつ、ビブリオバトルについてのデマをばらまいていることです。  昨年11月、@ichinoseyayoiは「本を読まないと答える人が多い理由」というまとめをTogetterにアップしていました(現在は削除)。その中では、ビブリオバトルをみると、本を読まない人が多い理由がよくわかった」として、以下のような驚くべき主張がされていました。 えーと、映画版の『宇宙戦争』について語るなら、一九五三年版についても触れないといけないのでは? あと、『タイム・マシン』や『透明人間』も映画になってますよ。 こういう質問がビブリオバトルではデフォだからホント面倒くさい。  先にも書いたように、上の文章は7章で、ヒロインの空が対戦相手の蟹江の発表を聴いていて、心の中で抱いた感想です。  しかし@ichinoseyayoiは、現実でも小説中でも発せられなかったその言葉を取り上げ、ビブリオバトルではデフォだから」と主張し、あたかもそんな質問が現実にしょっちゅう発せられているかのように主張したのです。ひどい大嘘です。  まれにルールに違反して、発表者の揚げ足を取る質問をする者がいるとしても、それが「デフォ」だなんてありえません。実際、僕はこれまで何十回もビブリオバトルに参加していますが、発表者を攻撃する質問なんて、3年ほど前に大阪の書店で行なわれたビブリオバトルで1度耳にしただけです(頭の固そうなお爺さんでしたが)。  それ以外の発言の多くは、当時連載中の『BISビブリオバトル部』第4部『君の知らない方程式』第3話からの引用、および改変です。ここは読書好きの若者たちが、読書嫌いの人間たちの読書に対する偏見に腹を立てている部分です。 http://www.webmysteries.jp/special/biblio-01.html  しかし、@ichinoseyayoiはあきれたことに、それを改変し、正反対の内容──読書好きがそうでない人々を罵倒している内容に改竄しているのです。  ビブリオバトルで有名な作家の小説が紹介された場合、「〇〇さんの他の作品はお読みですか?」という質問が出るのが定番だ。本当にその作品に惚れこんだのなら、同じ作者の他の作品も読んでみようと思うのが当然だからだ。つまり発表者がその本をどのぐらい好きなのかを計る質問なのだ。だから、発表者がその小説しか読んでいないと知ると、この人の愛はその程度のものなのかとがっかりしてしまう。 ――『君の知らない方程式』第3回  ここはビブリオバトル終了後、そば屋での雑談中の場面。しかも武人のモノローグなのですが、@ichinoseyayoiはこれをこのように改変して引用します。 作者の書いた他の本質問されるなんてビブリオバトルの基本なのに、なんで答えられないんですかww  なんと、フィクションの中の、それもモノローグを、「なんで答えられないんですかww」と実際にビブリオバトルで発表者に対して発せられたかのように嘘をついているのです。 「ほら、『さよなら絶望先生』であったろ」と部長。「普段、あまり本を読まない人間が、病気で人が死ぬだけの小説を読んで、“こんなに悲しい物語は読んだことないわ!”って泣いてしまうってネタが」 「ああ、あったあった!」と弐久寿。「『絶望先生』って感心するよね。ちょくちょく、この世の真理、鋭く突いてくる」 「まさにあれだよ。あまり本を読まない人間が、たまたま、そんなにたいしたことのない内容の本を読んで、深く感動してしまうってことがよくある。もちろん、本当にすごくいい本だということも確率的にはあるわけだけどさ。でもやっぱり“本あんまり読まないんです”ってアピールされると、どうしても疑いの目で見てしまうよな」 ――『君の知らない方程式』第3回  これもやはりビブリオバトル終了後の雑談中に、部長が『さよなら絶望先生』の中のギャグについて語っている部分ですが、@ichinoseyayoiはこれもあたかもビブリオバトルにおいて実際に発せられた発言のように改変します。 普段本読まない人間が病気で死ぬだけの話を読んで、こんな悲しい話読んだことがないって言ってるだけww あまり本を読まない人間が、たいしたことない内容の本を読んで深く感動してるだけww  あるいは、『翼を持つ少女』第5章、ビブリオバトルの前に、相手方の蟹江が、その性格からして不正をするかもしれないと、部長が予測するシーン。 「そんなの、ルールで禁止されてないんですか?」 「ない」部長はかぶりを振る。「さっきも言ったように、ビブリオバトル普及委員会の定めている公式ルールは最小限だ。不正の定義も、不正に対する罰則も、明確に謳われていない。基本的に性善説に基づいて作られている――なぜか分かるか?」 「……いいえ」 「不正をするメリットがないからだ。うちのBB部でも、勝っても賞賛以外の何も得られない。よほど大きな大会でも、賞状の他には、副賞の図書カードが出るぐらいだ。そんなもののために不正をやろうとするバカなんかいなかった――これまでは」  部長はiPadの画面を指で叩いた。 「こいつにはメリットがある。県内ナンバーワンの我がBB部に勝てば評判になる。そう考えているはずだ。不正をすることにメリットがあるなら、不正をする可能性がある――その前提で対応すべきだろう」 「向こうの社会学研は九人」明日香先輩が考えこむ。「蟹江自身は自分の本に投票できないし、たぶん哲秋くんも潔癖だから、そういう工作に関わるとは思えない。でも、他の七人の会員は蟹江に心酔してるみたいだし、裏工作を持ちかけられたら断れないかも……」 「社会学研以外の人間は?」 「さあ? でも、そんな不正、信頼できる口の堅い人間にしか持ちかけられないんじゃない? あまりサクラが多いと、どこかから話が洩れる危険も生じるし。七人ぐらいが上限じゃないかな」 「よし、サクラの数は七人としよう」部長は俺に不敵な笑みを投げかけた。「どうだ、武人? 初心者相手にちょうどいいハンデだと思わないか?」 ──『翼を持つ少女』第5章  このシーンでは、通常のビブリオバトルでは「不正をするメリットがない」「不正をやろうとするバカなんていなかった──これまでは」と、今回だけの特別の事情であることを強調しています。つまりビブリオバトルで7人のサクラを仕込むというのは、この『翼を持つ少女』というフィクションの中の出来事であり、事実ではないことを明示しているんです。  しかし、@ichinoseyayoiはやはりそれをこのように醜く書き換えます。 あんな発表に票が入ったのはサクラがいるからです。ああいう人はそういうことをするんです。7人ぐらいサクラだと考えるのが妥当です。  当然、現実の、ごく普通のビブリオバトルで、終了後に「あんな発表に票が入ったのはサクラがいるからです」などと言う人間がいるとは思えませんし、実際、そんな話は聞いたことがありません。完璧に妄想です。  反吐が出そうな思想を発表する自由はある。しかし、そういう思想に対して反論する自由も、もちろんある。本の中で間違ったことを書いたり、間違った本を紹介したりしたら、当然、叩かれる。叩かれる覚悟もなしに意見を発表しようと思うのは、虫のいい話だ。“撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ”――それが言論の自由ってもんだ。  僕らがビブリオバトルを――正しいビブリオバトルをみんなに見せるんだ。そして蟹江を負かす。参加者に“こっちの方が面白い”と思わせる。それが蟹江の意図を打ち砕く最良の方法だと思う」 「でも、ビブリオバトルの公式ルールじゃ、本の内容を批判したり、発表の揚げ足を取るような行為は禁止されてますよ」と俺。 「うん。あれこそまさに、ビブリオバトルが論争の場になることを防ぐために設けられたルールだろうな」 「直接批判せずに、どうやって反論するんです? あと、さっき、政治的対決は避けるって言ってたでしょ?」 「もちろん。だから、蟹江の出してくるであろう本や、奴の主張に、直接ぶつけるようなことはしない。だから政治関係の本は一切禁止だ。そのうえで、あいつのスタンスを叩く」 「……矛盾した命題ですね」 「頭の体操になるだろ?」 ──『翼を持つ少女』第5章  これも@ichinoseyayoiはめちゃくちゃに改変します。 間違った本を紹介したりしたら、当然、叩かれる。叩かれる覚悟もなしに意見を発表しようと思うのは、虫の良い話ですよww  原文の後の部分を見れば「叩かれる」というのが、ビブリオバトルの場で相手を直接批判するという意味ではないことがはっきり書かれているのですが、@ichinoseyayoiは卑劣にもそこを隠しています。 短編集はその並び、収録までが一つの作品。なぜ12本の構成に触れないですかww  これは僕ではなく、「ビブリオバトル首都決戦2012」での猪瀬直樹氏の発言です。 https://www.youtube.com/watch?v=YmVssRXYsuU  ビブリオバトル関係者の方には説明不要でしょうが、ビブリオバトル首都決戦2012は東京都と財団法人文字・活字文化推進機構が主催していたので、当時はまだ副知事だった猪瀬氏が主催者代表として招かれたのです。(この後、都知事になるも、2013年12月、徳洲会グループ問題で辞任)  まあ、確かに公式ルールに抵触してるんで、本当は司会者が注意しなくちゃいけなかったんでしょうが、こんなのは「デフォ」ではないという事実は変わりません。  なお、現在の全国大学ビブリオバトルと全国高等学校ビブリオバトルは、活字文化推進会議が主催しており、もう東京都も猪瀬氏も無関係です。  他にも@ichinoseyayoiがビブリオバトルを観戦中に聞いたと主張する発言は、猪瀬氏の発言を除けば、ほとんどが『BISビブリオバトル部』シリーズからの引用、それも発表者に対して発せられていないもの(つまり、現実にも小説中にもなかったこと)ばかりです。つまり、すべて彼の創作なのです。