『ビーバップ!ハイヒール』出演裏話

 番組の放映から1週間が経ったので、番組の裏側をお話ししましょう。

https://www.asahi.co.jp/be-bop/

「常識を超越している。科学的に説明不可能。そんな言葉に騙されてはいけません」

「超常現象の多くには、調べてみると意外な真相が隠されています」

 これは僕が考えたんじゃなく、台本に書いてあった台詞です。当たり前ですけど、こういう「かっこつけた台詞」は、あらかじめ台本で決められていて、出演者はその通りに喋ることを要求されるんです。もちろん、あまりにも自分の意図と違う場合は改変させてもらいますけど。

 この場合も、言い回しがなんか僕の言いたいことと違うので、何箇所か修正をお願いしましたが、だいたい台本通りに喋ってます。

 もっとも、トチって何度もリテイクしましたけどね(笑)。台本通りに喋るのってすごく苦手。あと、自分の演技力のなさにがっくりきます。まったく棒読みです。

 このシーンで画面にちらっと映る本の一冊は、ポピュラサイエンス臨時増刊、ジェラルド・ハードの『地球は狙われている』(講談社・1951)。〈BISビブリオバトル部〉の2巻『幽霊なんて怖くない』に出したので、ご存知の方も多いのでは?

 あと、パソコンのキーを叩いているシーンが映りますけど、実はあそこはテレビ局の会議室で撮影されています。ノートパソコンも僕のじゃなく、スタッフの私物。おまけにロックがかかっていて、キーを叩いても画面に文字は出ません(笑)。叩いてるふりをしてるだけです。

 小説家がこんな風にバラエティ番組に出演する時には、必ずと言っていいほど、パソコンで何かを打っているふりをさせられるんです。僕なんかもう何回やらされたことか。小説家の仕事風景のつもりなんでしょうが、当たり前ですけど、すべてヤラセです。TV局の取材が来てるのに、その前で仕事する小説家なんていません(笑)。

 学者の方の場合、分厚い本を読んでいるカットがよく映りますよね。こんな映像に何の意味があるのかなと、いつも疑問に思うんですが。

 たむらけんじがスペインで撮影したUFOの話。放映ではカットされてますけど、実は彼はかなりしつこかった!

 僕が「手ぶれでしょ?」と言うと、僕の席まで来て、スマホの画面を見せつけるんですよ。「これは絶対に手ぶれじゃありません」と、力強く。でも、僕は相手にしませんでした。

 というのも、その直前、「(手ぶれしないように)がっつりと脇を締めて」と撮影の模様を実演しているまさにその瞬間、彼の手が動いているのを目にしちゃったからです(笑)。でも、彼は自分の手が動いていたことにまったく気がついていませんでした。

 だからUFOを目撃した瞬間もそうだったんでしょう。本人は「スマホを固定していた」と思いこんでるけど、実際は興奮して揺れてたんじゃないかと。

 UFOの正体については、「凧じゃないですか」と推理を口にしました。海外にはLEDのついた凧があって、日本でも2011年に荒川で、それがUFOと誤認されて騒ぎになってるんです。それに似てるなと。でも、そこもカットです

https://www.youtube.com/watch?v=8754uaV_h_c

 あと、大晦日のカウントダウンの最中に撮影されたというのもひっかかります。カウントダウンの時には、他にも住民がいろんなものを飛ばしてるんじゃないでしょうか? 凧が飛んでいてもおかしくない気がします。

 まあ、正体が分からないという点では、まさにUFO(未確認飛行物体)ではあるんですが。

 お分かりでしょうけど、番組中で紹介されている謎解きは、ほとんど僕がやったものじゃありません。海外のニュースから拾ってきたネタや、ASIOSのメンバーが解明したやつばかりです。

 例外は最初から2番目の「トワイライト・フェノメノン」。あれはフジテレビの『ザ・ベストハウス123』で放映されたネタなんですが、当時、番組が終わった直後にすぐにインターネットで検索かけたら、2時間ほどで、日時や場所、原因から、なんというロケットかまで、すっかり特定できました。

 テレビでは「謎」と呼ばれていても、実はその程度の調査で真相が判明することが多いんです。ほとんどの人は、そんな調査をやらないだけで。

 三田光一の念写した「月の裏側」。

 僕はこの時、写真の背景の星空を指差して、江川達也氏に「これランダムじゃなく、手で打ってますよね?」と話を振りました。マンガでは星空を描く場合、黒いバックにブラシにつけたホワイトを散らすのが普通です。マンガ家さんならこの星の分布の不自然さにすぐ気がつくだろうと。

 実際、江川さんも「手で描いてますよね」と同意してくださったんですが、そこもカットされました。

 ノストラダムスの話だけは、僕の方からスタッフに、「このネタは受けるんじゃないんですか」と提案したもの。案の定、「五島勉」という人名は具体的に出せませんでしたし、構成は向こうにおまかせしたので、再現ドラマの考証がいろいろおかしいんですが、「実はインチキでした」というのは視聴者に伝わったと思います。

 オイルショックやトイレットペーパー騒ぎなんてものがあったことは、今の若い人は知らないでしょうし。

 ちなみに今発売中の『RikaTan(理科の探検)』という雑誌の10月号に、『ノストラダムスの大予言』という本のインチキを解説した記事を載せています。興味のある方はお読みいただければ幸いです。

 というわけで、どうにか本番は乗り切れた……思ってたんですが、最後の最後でハプニングが。「奥様は超常現象というのを信じておられるんですか」という質問を振られて、嘘をつくわけにもいかず、「我が家のトイレにドイツの幽霊がいる」という話をするはめになっちゃいました(笑)。

 前にも本に書きましたけど、妻は実は霊媒体質なんですよ。幽霊は見えないけど感じられるんだそうで。新婚直後、妻は友人たちとドイツに観光にいったんですが、帰ってからしばらくして「トイレに幽霊がいる」という話をしだしたんですよ。たぶん古城観光に行ったんで、その時についてきたらしいと。

 ドイツの古城の幽霊! それはかなり由緒正しい奴なんでは?

 妻の話によれば、特に悪い霊ではなかったらしく、お祓いをすることもなく、気がつくとどっかに行ったらしいんですけどね。

 その後、さらに放送ではカットされた部分があります。

「お子さんはどう思ってらっしゃるんですか?」と問われて、またも「娘も小さい頃は妖精さんや幽霊さんが見える子で……」という話をしちゃいました。

 いや、ほんと。小学校に入る前までは、当たり前のように妖精が見えてたり、亡くなったお祖父ちゃんが見えたりする子だったんですよ。今はもう大人になって、見えなくなってますけど。

 たぶん子供というのは誰でも、小さい頃は「見えない友達」がいるんじゃないかと思うんですよ。大きくなるにつれて見えなくなって、忘れてゆくだけで。

 というわけで、僕は家ではオカルトに関しては寛容なスタンスを貫いています。「そんなの見えたってたいしたことないよね」と。

 ですから我が家は、結婚以来20年以上、とても平和です。