「ヤオイン」はなぜ受けたか

 長いこと書きこみをサボってて申し訳ない。先月は仕事が忙しかったり、個人的に落ちこむことがあったりしたもんで。

 さて、気分転換と行こう。今月最初の話題は、もう旬は過ぎちゃったけど、これだ。

 僕が初めてこれを聴いたのは、アップされて4日目の10月16日。感動のあまり、速攻でマイリストに入れた。その後、1日に4〜5万再生というペースで伸び続け、たちまち80万再生を突破。そのうちの30回ぐらいは僕である(^^;)。

 さすがにここ数日は、新曲がアップされたこともあってか、再生数のペースは落ちたようだが、まだじわじわと伸び続けている。近いうちに100万再生を突破するのは間違いなかろう。

 このユニットの他の歌もひと通り聴いたのだが、どれもいいんだよね。特に「モエッ☆BL飛行」は気に入って、仕事中にBGMとしてエンドレスで聴いていた日もある。

 いったいなぜこんなに受けたのか?

 第一に、替え歌としての歌詞の完成度の高さがある。

 僕も昔はよく替え歌を作った。替え歌というのは、元歌の歌詞を完全に変えてしまってはだめなのだ。歌詞を可能な限り利用しつつ、元歌とまったく違うものするのがミソなんである。

ヤオイン」の場合、「世界」→「腐海」、「デタラメ」→「見ちゃらめぇ」など、元歌の語呂をうまく生かして変換することにより、元歌との間に強烈なギャップを生じさせている。まさに替え歌としてあるべき理想的な形と言える。

「BL飛行」も同じで、「滑稽な人種のように」とか「りんかい線飛び乗って」とか、上手いなあと感心した。いや、いちばん衝撃だったのは「オス同士またがって」ですが(^^;)。

 第二に、声がいい。これで歌が下手だったら、単なる一発ネタで終わっていただろう。だが、この美しい声でこの大バカな(褒め言葉)歌詞を熱唱されると、もうたまらん。感動するしかないではないか。

 ニコ動で人気を集めるパロディ作品には、「元ネタとのギャップが大きい」「大バカなことを手間をかけて大マジメにやる」というものが多い。

 単にバカなだけのネタでも、ある程度の笑いは取れる。しかし、安直なネタはそんなに伸びない。ちょっと受けただけで忘れられてしまう。やはり伸びるのは完成度の高い作品だ。

 最近の話題作を例に取ると、たとえば「インデックスさんがテイルズオブファンタジアOP曲を熱唱し始めました」というのがある。これも発想自体は大バカだが、手間をかけて口パクを合わせているところが素晴らしいのである。(後続作品があまり伸びないのは、安直に模倣しているだけのものが多いせいだろう)

 あるいは「初音ミク−リローデッド−」とか「初音ミク細かすぎて伝わらないモノマネ選手権SPECIAL」とか「アイドルマスター 菊地真 パンツじゃないから恥ずかしくない誕生日PV 」あたりを思い出していただきたい。技術力の高さもさることながら、「こんなバカなことにこんなに手間をかけている!」というのが感動を生むのだ。

 もうひとつ、(パンピーはともかくオタクの間では)腐女子に対する偏見が薄れていることも一因ではないかと思う。

ヤオイン」のコメントにしても、いまだに「キモい」などとコメントしている奴もいることはいるが、圧倒的に多い賞賛のコメントにすぐ流されてしまう。この数の多さは、「同じ腐女子からの共感」というだけでは説明がつかない。僕のように、男性のファンも多くついていると見て間違いないだろう。

 そもそも、801に熱中する腐女子を「キモい」と思う感覚が、僕には理解できない。そんなことを言ったら、男がエロマンガを読んだり、アイドルの写真を見てむらむらと妄想したりするのも「キモい」ということにならないか? そういう感想を抱く人というのは、よっぽどエロに興味のない潔癖な人なのだろうか。

 男女の関係を逆転させて考えてみれば、女性が男性キャラにエロい妄想を抱くのは、べつにおかしいことではない、と僕は思う。

 それに「ヤオイン」には男でも共感できる部分がある。特に、パンピーの異性と知り合ったけど、息苦しくて話題が枯れていって「私帰りたい」と思っちゃうくだりなんて、自分の体験を思い出して「あー、あるあるある」ってなもんですよ(笑)。

 近年、マンガやアニメの世界で、『となりの801ちゃん』や、『さよなら絶望先生』の晴美、『げんしけん』の大野さんや荻上さんみたいな腐女子キャラが増えてきたのも、偏見を下げている原因かもしれない。

腐女子はキモい」から「腐女子でもかわいい」へ、さらには「腐女子だからかわいい」へ――いわば「腐女子萌え」という動きが出てきているのではないか。

 無論、本物のA子&B子さんがどんな顔なのかは分からない。しかし、妄想は自由である。声だけ聴いて「実物はものすごくかわいいんじゃないか」と妄想したって、何も悪いことはあるまい。

 さらに進んで、今度の冬コミあたりでは、2人の百合本とか出たりするかもしれない(油断はできない。冗談がすぐ本当になるのが同人界だ!)。まあ、腐女子のみなさんも、実在の芸能人やらスポーツ選手やらでホモ本を出しているのだから、自分をモデルにレズ本を出されても怒れまい。

 繰り返す。妄想は自由だ。どんな不道徳な行為だろうが犯罪行為だろうが、頭の中でやっている分には何も悪くない。

 そしてこうも思う。こんな歌が自由に歌われ、支持される日本という国は、言論の自由の保証された素晴らしい国だと。(いや、皮肉じゃなくマジで)