今井哲也『ハックス!』
今日は最近読んでいる新旧のマンガを紹介したい。
まずは友人から薦められてハマった今井哲也『ハックス!』(講談社)。
日蚤台高校に入学した阿佐美みよしは、新入生歓迎会で流された自主制作アニメに感動し、アニメーション研究会に入ろうと決意する。だが、そのアニメは10年以上も前に作られたもの。現在のアニメ研は何も活動しておらず、廃部寸前だった。
しかし、みよしの情熱がみんなを動かしてゆく。最初は彼女の描いたパラパラマンガを撮影してアニメにするだけだったが、しだいに本格的なアニメ製作に移行してゆく。目標は自主制作アニメを作ってニ○動にアップすること!
設定自体は単純である。しかし、作品にこめられたアニメへの熱い情熱が胸を打つ。
みよし自身がアニメに関してまったく素人で、(読者とともに)基本的な知識を少しずつ学んでゆくという構成。同時に、パラパラマンガからはじまって、しだいに彼女のアニメ作家としての才能が開花してゆくのが描かれる。それもすごい天才というわけじゃなく、既製のアニメをトレスしているうち、スカートの揺れ方がおかしいことに気づくところなど、地味に才能が光っているのを見せるのが、またいい。
日常の描写は地味だが、作品のキモであるアニメのシーンは、躍動感あふれるディフォルメされたパースで描かれていて、その落差がアニメの楽しさを表現している。作中作である『アクアス』や『言霊少女』も見たくなってくる。
特にアニメ制作の過程がわくわくする。キャラを彩色していて、線が切れてるもんで色があふれちゃう場面なんか、「あー、あるあるある」と微笑ましくなる。
同じような設定の『空色動画』というマンガも読んだけど……作者の方、ごめん。僕は『ハックス!』に軍配上げる。
ネームも上手い。興奮すると日本語が崩壊するみよしもいいんだけど、2巻CUT.10の、みよしと泰樹と結花の会話なんか、テンポの良さにほれぼれする。
特に印象的なのは、悪役(?)である映研部長。憎たらしげな表情を見せるわけでも、乱暴な言葉遣いをするわけでもないのに、ものすごく嫌な感じなのだ。特に3巻のラスト近くのシーンの、背中がぞわぞわくるような生理的不快感ときたら……こういうキャラクターを創造できるってすごいわ。
まだ物語ははじまったばかり。続きが早く読みたい。