『SHIROBAKO』2話が神回だった

 今期のアニメ、『ログ・ホライズン』二期と『ビルドファイターズトライ』はどちらも前作からの安定した面白さで楽しめるし、作画の美しさでは『神撃のバハムート』、ギャグでは『繰繰れ! コックリさん』が一番かと思う。

 しかし、個人的にイチオシしたいアニメは『SHIROBAKO』だ。

http://shirobako-anime.com/

 TVアニメ『えくそだすっ!』を制作しているプロダクションが舞台。これまで、アニメの世界を描いたアニメはいくつかあったけど、この番組はとにかくリアリティが素晴らしい。

 もちろん現実そのままじゃなく、いろいろアレンジされてはいるんだろうけど、「ああ、実際にこうやって作ってるんだろうな」とか「番組の裏側ではこういうトラブルもあるんだろうな」とか納得させられるんである。

 第一話からすでに、原画マンが逃げたり作画監督が倒れたり(もちろんアニメの中でですよ。念のため)というピンチの連続で、スケジュールがかなり苦しくなってきており、『えくそだすっ!』がちゃんと最後まで放映できるか危うい状況。それでも制作進行のヒロイン・あおいやスタッフたちのがんばりで危機を乗りきってゆく。まさに綱渡りで、そんじょそこらのバトルアニメやサスペンスアニメよりはらはらさせられる(笑)。

 特に先日放映された2話『あるぴんはいます!』にはノックアウトされた。

 まず、Aパートのアフレコのシーンがいい。あるぴん役の声優・茅菜夢衣役の茅野愛衣(ややこしいな)の演技にも感心するけど、BGMを「感情につける」「シチュエーションにつける」という意味がすごくよく分かる。

 そこからが大変。アフレコに立ち会った監督が、あるぴんの解釈が違うと言い出し、彼女の過去の設定(それも最初からあったんじゃなく、今思いついたばかりの)を語りだして、ついにはスケジュールがせっぱ詰まっているにもかかわらず、作画リテイクを言い出す。

 ここの檜山修之の演技がまたいいんだわ。昔は勇者王だったのに、最近は三枚目も板についていて、この回でも「いてよーし! みたいな」とか「お姉さんだったわけだー」というあたりがおかしくて、何度も聴き直しちゃったよ。

 この監督、以前に別のアニメでスケジュールを崩壊させた前科があり(あるあるこういう話!)、おかげで自分の演出回が「伝説の作画崩壊回」になってしまった演出家が、今でもそのことを根に持っている……という、アニメ関係者なら胃が痛くなりそうな状況。

 Bパートでは、監督の主張をめぐって、スタッフ全員が集まり、ディスカッションを繰り広げる。このくだり、ほとんど狭い室内だけで展開する会話劇で、アクションなんかないにもかかわらず、見ていてぐいぐい引きこまれる。しかも熱くシリアスに口論している内容が、美少女キャラクターの表現や設定についてなんだから、その落差がたまらない。

 冷静に一歩引いて考えると、何でそんなことで大の大人たちが激論してるんだよとツッコミたくなるんだけど、素人には「どうでもいいこと」に思える部分にこだわるのがプロというものなんだろうな。

 しかも、リアルなだけじゃなく、あおいのピントのずれた発言から、話が思いがけない方向に転がっていって、最後にアニメならではのファンタスティックな表現が炸裂する。このドアホウな展開(褒め言葉)には、深夜にもかかわらず笑い転げた。「『ミスター味っ子』かよ!?」と。

 個人的に、この回は神回認定したい。

 ちなみにアフレコの後で絵の方を直すというのは実際にも稀にあることらしい。『カレイドスター』5話で、そらが空港で泣くシーン、広橋涼が演技を超えてマジ泣きしてるもんで、佐藤順一監督がそれに合わせて絵の方を描き変えるよう指示したという。たぶんそのへんがヒントになってるんじゃないだろうか。(実際、すごい出来だったよ、あのシーン)

 リアルすぎるアニメって、ちょくちょく「これって実写でやってもいいんじゃない?」と疑問に思ってしまうことがあるんだが、この『SHIROBAKO』はまさにアニメであることに意味がある。アニメを愛する人間なら見て損はない。

 なお、ニコニコ動画で公式配信されてるので、見逃した人も今からでも追いかけられる。

http://www.nicovideo.jp/watch/1412927306

 ちなみに、関西では今夜(10月25日深夜)、第3話の放送。ネットでの評判はいいので楽しみである。でも、 「総集編はもういやだ」ってサブタイトルがすごく不吉なんだけど(笑)。