オーケストラ姉さん(仮名)のダイダロス・アタック
先日は湿っぽい話題だったので、今回は陽気な話題を。
10月30日土曜日、友人ら三人と『映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか?』を見てきた。
ちなみに僕が劇場版『プリキュア』を見るのは、無印の時以来5年ぶり。今年はテレビ版が面白くてハマっちゃったんである。
さほど期待してなかったけど、これがけっこう面白かった。毎年プリキュア映画を観に行っている友人の話でも、今年は特に出来がいいらしい。
アクション・シーンも迫力あって楽しめたけど(世界遺産が盛大にぶっ壊されます。いいのか?)、ゲストキャラであるオリヴィエ少年とサラマンダー伯爵の心理がていねいに描かれているのに感心。オリヴィエがつぼみたちと一人ずつ接し、彼女たちの境遇を聞くうちに、頑なな心が開いてゆくという構成は、テレビ版の設定をフルに活かしていて、好感が持てる。(まあ、狙われているオリヴィエを街に連れ出すのは不用心だろとは思うが……)
今回の敵であるサラマンダーは、藤原啓治の名演が冴える。「この世界を滅ぼしてやる」とか言ってるけど、内心ではその空しさに気づいていることが、声の調子だけで分かるのだ。敗北した後も清々しくて良い。
一方、それ以外の説明は徹底的に省略してある。なぜつぼみたちがパリでファッションショーをやるのかという説明すらないのである。オリヴィエが日本語が喋れるのはかつて日本に来ていたからだろうけど、それも回想の絵で見せるだけでいちいち説明しない。ラストバトルにしても、あの場所にいきなり4人が出現したのは、ハートキャッチミラージュでワープしたんだろうけど、そのへんの説明もばっさり省略。
でも、それでストーリー上は特に支障がないのだ。むしろそうした細かい部分をすっ飛ばしたおかげで、最後の方は勢いで一気に突っ走っている。前に見た別のアニメで、必要な説明まで省略されていたうえに、悪役の動機が分からなくて困っちゃったんだけど、この映画の場合、どこを省略するかという見きわめが上手くいった例だろう。
鑑賞後、3人でレストランに入って感想を話し合う。
「コッペ様が美味しいとこを持っていきましたね」
「あそこで出てくるとは予想外やったな」
「僕もてっきり、サンシャインがサンフラワーイージスで防ぐもんやと思った」
「ピンチを救った後で、『後はまかせた』って感じで、こてっと倒れるのがまた……」
「コッペ様は強いけど稼働時間が短い」
「ほとんどセブンガー(笑)」
「ああ、そうやね。ミクラスやウィンダムじゃなくてセブンガー」
「しかもエンディングでまた……(笑)」
「何でやねん、コッペ様!?」
「あれ、えりかのお母さんとか、どうやって説得したんやろ?」
「キュアアンジュの背後に歴代のプリキュアがずらっと並ぶところで、何か振袖っぽいデザインのがいたんですけど……」
「やっぱり江戸時代にもいたんちゃうの、プリキュア(笑)」
「何百年も前から砂漠の使徒と戦ってきたという設定やから、当然、江戸時代や明治時代にもいたに違いないよ」
「あの設定書、見たいよな〜」
しかし、いちばんすごかったのは、クライマックスで炸裂した新必殺技、ハートキャッチオーケストラである。
テレビに登場したのは10月31日放映分からなんだけど、僕らが劇場に行ったのはその前日。だもんで、予備知識なしに、いきなり大画面でアレを見せられたのである。てっきりいつものようにビームを放つか体当たりだろうと予想していたら……いやはや、こんな衝撃的な必殺技は、石破ラブラブ天驚拳以来である(笑)。
「あのお姉さん……正式な名前が分からんからオーケストラ姉さん(仮名)と呼ぶけど、でかかったよなあ」
「あのドラゴンが30mぐらいあったでしょ? それを手で包みこんでたから……」
「ダンガードAぐらい?」
「もっと大きい。マクロスか……」
「いや、さすがに1200mはないやろ」
「でも、マクロス・クォーターぐらいはありそうですよ」
(その後、テレビでも見たが、デザートデビルとの対比からすると、ゆうに身長1200mはありそうである)
「しかし、来年の春の大集合映画はどうするんですかね」
「というと?」
「いつもは歴代プリキュアが全員で必殺技を出して、力を合わせてボスキャラを倒すというのがパターンなんですよ。でも今回、オーケストラ姉さん(仮名)がすごすぎるから……」
「ああ、そうか。他のプリキュアとのバランスがなあ……」
「だったらダイダロス・アタックやで!」
「はあ?」
「最後にプリキュアたちの前に、全長何kmもある巨大な敵が現われるんや。そこでハートキャッチの4人以外の全員を、オーケストラ姉さん(仮名)が右手で握るねん。でもって敵にパンチをぶちこむ。めりこんだ拳を相手の体内で開くと、プリキュアたちがいっせいに攻撃して、内部から破壊する!」
「うわあ、それ見てえ!」
「それをやったら神ですよ」
というわけで、来年の劇場版ではぜひダイダロス・アタックを希望します。