ライトノベルについていろいろと(前)

 先日のLiveWireの企画「語りつくすぞ!ライトノベル」の報告をかねて。  何年か前に某出版社からライトノベルについて解説する原稿を書いてくれと頼まれたけど、お断りしたことがある。「僕はそんなに詳しくない。今、発行されているライトノベルの1/10も読んでませんから」「もっとたくさん読んでいる人に頼んでください」と。  今回、この企画をやるために調べてみて分かったのは、2011年にはライトノベルがなんと968冊も出てたという事実。 http://d.hatena.ne.jp/yuki_tomo624/20120122/1327244524  うん、やっぱり1/10も読むのは無理(笑)。97冊読もうとしたら月に8冊だもの。他の本読んでる時間がない。というか、かなりのライトノベル好きでも、年に100冊以上読むという人はあまりいないんじゃないかと思う。  だから今回は、本当に自分が知っている範囲の話に限定して進めることにした。  まずは「ライトノベル畑からデビューした作家」の紹介。ライトノベル系の新人賞でデビューしたり、あるいはデビュー後しばらくライトノベルを書いていた人が、一般文芸に移ってくる例が多い。冲方丁桜庭一樹有川浩乙一小川一水野尻抱介橋本紡長谷敏司……最近の注目は『ビブリア古書堂の事件手帖』の三上延氏。2002年にデビュー以来、電撃文庫で30冊近く書いていた。  やっぱりね、栞子さん萌えるよね!(笑)  会場でも言ったんだけど、年配のミステリ作家が『ビブリア古書堂』と同じ題材で小説を書いたとしても、栞子さんはあんな魅力的なキャラにはならなかったと思う。『ビブリア古書堂』はライトノベルの方法論をうまく取り入れたのが、ヒットの要因のひとつ(あくまでひとつだけど)ではないだろうか。  次に「児童小説とライトノベルの境界が曖昧になってきている」という話。  2004年頃、当時小学生の娘に読ませる本を本屋で探していて、『妖界ナビ・ルナ』の表紙を見つけた時には、「えっ? 最近は児童書でもこんな絵ありなの?」と驚いたもんである。  ところが今や、フォア文庫青い鳥文庫も、さらには角川のつばさ文庫も、アニメチックなキャラクター、ラノベ風の表紙のものが当たり前になってきている。  会場で意外だったのが、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『キノの旅』や『生徒会の一存』が角川つばさ文庫から児童書として出てることを知らない人が多かったこと。  読んでるんですよ、小学生の女の子が『生徒会』を! 公式サイトに載った感想に「中学校か高校生になったら、生徒会に入りたいと思いました」と書いてあって、「いや、あんな生徒会ないから!」と思わずツッコんでしまいましたよ(笑)。  つまりこれ、小中学生のうちからラノベを読ませて、ラノベ界にひきずりこもうという角川の戦略なんである。  この戦略、正しいよ! 先日、ニュースで、中学生にいちばん人気がある作家は山田悠介だというのを知って暗澹たる気分になったもんで(笑)、よけいにそう思う。『リアル鬼ごっこ』読ませるぐらいなら、『ハルヒ』や『キノ』を読ませた方が、はるかに教育上よろしい。  次は「ライトノベルの定義」の話。これ、意外に考え出すとややこしい。ライトノベルと言っても、SFもファンタジーもホラーもミステリも恋愛小説もあり、ドシリアスな作品からハチャメチャなギャグ作品まで、あらゆるものが揃っていて、ひと言でくくれないのである。  まあ、ライトノベル・レーベルから発売されているものがライトノベルというトートロジーみたいな定義は、つい納得したくなるし、「表紙が女の子でカラー口絵があって本文イラストがある文庫本」というイメージも、だいたい合ってるとは思う。  でも、そうなると、『化物語』はライトノベルじゃないのか、という問題が発生してしまう。あれを「ライトノベルじゃない」と言い切るのは、何かおかしい気がする。  あと、桜庭一樹さんの『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が富士見ミステリー文庫から出てた時はライトノベルで、後で角川から出たのはライトノベルじゃないのか、とか。(ちなみに僕は富士見ミステリー文庫で読んだ)  有川さんの『図書館戦争』も、先に挙げた定義からは完全にはずれてるんだけど、ノリはライトノベルなんだよなあ……。  というわけで、厳密に定義できません、ライトノベル。読者が「これはライトノベルだ」と思ったものがライトノベルなんだろう、たぶん。