この夏の総決算・その4

●8月15日(土)

 コミケの中日だけど、この日はコミケをお休みし、娘といっしょに水戸の徳川ミュージアムへ。

http://tokugawa.gr.jp/

 おめあてはもちろん、燭台切光忠の展示。 娘は特に燭台切さんがお気に入りで、どうしても実物を見たいというので、迷わないようについていくことにした(娘は方向オンチなのである)。

 実物が沈んでしまっている艦娘と違って、刀剣の場合は現代まで生き残っているものが何振りかある。燭台切光忠もそのひとつ。

 あいにく関東大震災で焼けてしまって、刀としての寿命は終わっているのだけど、生前の形はしっかり残っていた。娘は無言で、熱心に見入っていた。 感覚としてはお墓参りなのだろうか。

 こういう地味な施設としては珍しく、入場者は満員とはいかないまでも、そこそこ多い印象。見たところ、半分ぐらいが若い女性。やはりコミケのついでに水戸まで足を伸ばした「とうらぶ」ファンと歴女だろうか。

 水戸だから水戸黄門のグッズがあるかと思ったら、意外に少ない。黄門様グッズは、たぶんTBSか太秦映画村の方が多いんじゃないだろうか。

水戸黄門』ファンの妻へのお土産は、葵の御紋の印籠を模したケータイ・ストラップ。

 ちなみに水戸家の印籠の実物も展示されていた。ドラマで使われている印籠は、これを参考に作られたものなんだけど、画面映えがするよう、実物よりやや大きく、飾りも少し多くしてあるのだとか。へーえ。

 帰りに水戸駅の書店で買ったのが『るるぶ ガールズ&パンツァー』(JTB)。大洗の聖地巡礼本。同人誌じゃなく、本物の『るるぶ』!

 番組の内容紹介と、大洗の観光案内ががっちり結びついた、ものすごくマニアックなガイドブック。あの回のあのシーンのモデルはここ……というのが全部分かるようになってる。「戦車カレー」「戦車すし」「あの!!カツ丼」とかも売ってるらしい。

 すごいな、大洗。

 夜は新宿のCafe Live Wireでのイベント、「怪獣作家無法地帯:東京編」。僕と大倉崇裕氏と開田裕治氏の三人。

 ちょうど『サンダーバードARE GO』第一回の放送日だったもんで、開始前にみんなで大型モニターで鑑賞。なしくずしにイベントに突入した。

 大倉崇裕さんとはお会いするのは初めて。ミステリ作家なのに「ミステリよりも怪獣が好き」と公言する濃い怪獣マニア。ワンフェスに通って怪獣フィギュアをいっぱい買ったり、ガチャポンのフィギュアを集めたりしておられるんだそうで、そのへんのトークがもう熱い熱い。

『怪獣文藝の逆襲』(角川書店)収録の短編「怪獣チェイサー」も良かったんだけど、むしろ僕が仰天したのは、長編『BLOOD ARM』(角川書店)。宣伝ではまったく触れられてないけど、実はバリバリの怪獣小説。それも、ものすごく荒唐無稽な!

 最初のうちこそ地味だけど、事件が起きはじめてからはまさにノンストップ。急展開の連続で、どんどん話がぶっ飛んでゆく。読みながら、「ええー、ここまでやるの?」「ここまで暴走しちゃっていいの?」と、あきれながらも、すっかり喜んじゃいました。

 うーん、でも、この小説を面白がれるのは、日本人の1000人に1人ぐらいじゃないかなあ。それでも確実に10万人はいるんだけどね。

 その10万人の人──荒唐無稽な怪獣小説がOKな人に、ぜひ読んでほしい作品である。

 ちなみに、タイトルの「ARM」は、「腕」ではなく「武器」のこと。