『ハヤカワ文庫SF総解説2000』

『ハヤカワ文庫SF総解説2000』

早川書房 1500円+税 11月20日発売

 小さい写真だとよく分からないでしょうけど、この表紙、ハヤカワ文庫SFの表紙がばーっと並んでるんですよ。

SFマガジン〉に三回分載された企画をまとめたもの。帯には「文庫創刊から現在まで2000点の書影・書誌データ」を全収録」とあるけど、正確には『ターザン』シリーズで未刊に終わったのが4点あるので、書影は1996点です。

 僕以外には、こういう豪華執筆陣。

縣丈弘、秋山完東浩紀、天野護堂、池澤春菜、石和義之、いするぎりょうこ、礒部剛喜、乾石智子、卯月鮎、榎本秋海老原豊円城塔、大倉貴之、大迫公成、大野典宏大野万紀大森望岡田靖史、岡本俊弥小川一水岡和田晃オキシタケヒコ、忍澤勉、小田雅久仁、尾之上浩司、尾之上俊彦、小山正、風野春樹、片桐翔造、香月祥宏、勝山海百合、鼎元亨、樺山三英川又千秋菊池誠、北原尚彦、木本雅彦、日下三蔵久美沙織、倉田タカシ、coco、五代ゆう小谷真理小林泰三酒井昭伸堺三保、坂永雄一、坂村健笹本祐一佐藤大、佐藤道博、塩澤快浩下楠昌哉新城カズマ水鏡子鈴木力、スズキトモユ、瀬尾つかさ、関竜司、添野知生、代島正樹、高槻真樹、高橋良平、立原透耶、巽孝之田中啓文タニグチリウイチ、東野司、飛浩隆鳥居定夫、酉島伝法、中野善夫、中藤龍一郎、中村融、七瀬由惟、鳴庭真人、難波弘之二階堂黎人仁木稔西崎憲、西田藍、西村一野崎六助野尻抱介、橋本輝幸、長谷敏司林譲治、林哲矢、東茅子、東雅夫福井健太福江純福本直美藤井太洋藤田雅矢藤元登四郎、船戸一人、冬木糸一、冬樹蛉、古山裕樹、片理誠、細井威男、細谷正充、牧眞司増田まもる、丸屋九兵衛、宮風耕治、深山めい、六冬和生、森晶麿、森下一仁森奈津子八代嘉美、八杉将司、柳下毅一郎山岸真山本弘、YOUCHAN、遊山直奇、ゆずはらとしゆき、横道仁志、吉上亮、吉田親司、吉田?一、渡邊利道渡辺英樹

 どんなSFがあるかだけじゃなく、誰がどの本をどういう風に紹介しているかを見るのも楽しい一冊。「ほう、やっぱりあの人はこの作品が好きなのか」とか、逆に「えっ、この人がこれを推薦する!?」という意外性があって面白いです。 二階堂黎人さんが〈ペリー・ローダン〉シリーズと〈ターザン〉シリーズを紹介してたり、田中啓文さんが〈ドック・サヴェジ〉紹介してたり。

 僕が紹介したのはこうした本。

ラインスター『青い世界の怪物』

アシモフミクロの決死圏

ヴァン・ヴォクト『地球最後の砦』

ローマー『突撃!かぶと虫部隊』

ウィリアムスン『航時軍団』『パンドラ効果』

ホワイト『宝石世界へ』

シュミッツ『悪鬼の種族』

キャンベル『暗黒星通過!』

クラーク『天の向こう側』『前哨』『10の世界の物語』『明日にとどく』『楽園の日々』

クラーク&バクスター『過ぎ去りし日々の光』

マッコーラム『アンタレスの夜明け』

モフィット『木星強奪』

スティス『マンハッタン強奪』

アンダースン&ビースン『臨界のパラドックス

 いやあ、執筆者間の競争がきびしかったです(笑)。人気のある作品はたいてい先に誰かに先に取られてるんですよ。イーガンもソウヤーもベイリーもホーガンもティプトリーも好きなんだけど、1冊も取れませんでした。

 クラークは短編集が意外に人気がなくて、僕にかなり回ってきたんだけど、本当は『渇きの海』がいちばん好きなんですよね。ストルガツキーの『ストーカー』とか、ハリスンの『テクニカラー・タイムマシン』とかも書きたかったなあ。 レムの『星からの帰還』や、シェクリイの『人間の手がまだ触れない』、ムーアの『暗黒神のくちづけ』も。

 このうち、他に書き手がいなくてしかたなく引き受けたのは、『地球最後の砦』と『暗黒星通過!』ぐらい。他はどれも面白いです。『宝石世界へ』 は「夢幻潜航艇」がすごく影響受けたし、『サイバーナイト』の艦隊戦のシーンは『アンタレスの夜明け』 に刺激を受けたもの。あっ、もちろん『時の果てのフェブラリー』のヒントは『ストーカー』です。

 それにしても、『青い世界の怪物』『航時軍団』『悪鬼の種族』あたりに立候補者がいなかったのが、ちょっと驚き。面白いのに!

 まあ、『突撃!かぶと虫部隊』や『マンハッタン強奪』あたりは、僕しか褒める人間はいないかなという気がするんですが(笑)。