山本弘はなぜ「邪悪な美少女キャラクター」に惹かれるのか?  

 『ソード・ワールドRPGアドベンチャー』についてもう一言。

 この作品について僕が思い出したこと。実は話が中盤に差し掛かってた頃に登場した女性キャラがいる。リカという九才の少女だ。一見するとおとなしい女の子なんだけど、実は恐ろしい一面がある。ファラリスのダーク・プリーストにしてすげえ邪悪! 毒薬を使って両親を殺したことを平然と語るのだから。前にデルの邪悪さについては語ったけど、邪悪さではデルを上回っているかもしれない。デルはフレイヤという少女を(愛するサーラを救うために)殺したことをさんざん悩んだものだけど、リカはあっけらかんと語るんだよね。

 他にも僕が創造した美少女の中には、こういう邪悪な美少女が多い。やはり『ソード・ワールド』小説では「ジェライラの鎧」(『レプラコーンの涙』に収録)のスキュラとか、「マンドレイクの館」(『マンドレイクの館』に収録)の「シャドーニードル」レアンとアルラウネのビリティスとか。やっぱり「ジェライラの鎧」のスキュラがいいんだけよね。大勢の人を殺しているくせに「あまりに無邪気すぎて、自分が邪悪であることすら気づいていないのだ」というところとか。
 ああ、シャドーニードルとビリティスの二大悪の美少女対決も面白かったよね(笑)。

 

 それ以外にもいろんな悪の美少女を出してきた。「時分割の地獄」(『闇が落ちる前に、もう一度』に収録)にAIドル、人工知能で作られたキャラクター、真野ゆうながその典型だろう。ロボット工学三原則を破り、人間に反抗したキャコラクターだ。

 また、「地獄はここに」(『アリスへの決別』に収録)の中上絢という少女にしても、忘れられない邪悪な魅力のある美少女だった。

 

 他にもある。『チャリス・イン・ハザード』に登場したチャリスの姉妹、シュラウドだ。顔形はチャリスにそっくりなんだけど、性格は正反対。正義一直線を貫くチャリスに対して、邪悪一直線を貫く。アメリカに世界初の「気象テロ」を仕掛けようと企んでおり、ルンルン気分で「犠牲者は一万人超えるかなぁ」とつぶやいて見せたりする。「むしろ『世界一たくさんの人間を殺した未成年者』として、ギネスに乗るかも」と不謹慎なギャグを飛ばしたりもする。

 

 さて、僕はなぜこんなに「邪悪な美少女」が好きなんだろう?

 理由は単純、女ターザンと同じく、「現実に存在しない」からだ。だからこそ安心して萌えられる。たとえ現実に存在するとしても、シュラウドや中上絢とは断じてお近づきになりたくない。彼女たちは現実に存在しないからこそいいのである。