『サーラの冒険』にも笑える点があった

 この前から『料理を作るように小説を書こう』を書く関係で、『サーラの冒険』を読み返しているのだが、面白い発見があった。それは第六作の『やっぱりヒーローになりたい!』のラストに近いシーンである。

 再会したサーラとデルが出会う場面だ。思わず感動するはずなのに、そうならない。というのも二人とも正体を隠していたのだ。サーラはアーシャという女の子になっておりいて、デルはというと魔法でカミートという少年に姿を変えていたからだ。もちろん読者はそんなことは知らないわけで……いや、作者はもちろん知っているわけなんだけど、読者が本当のことを知ったならどう思うかと考えると、書きながら笑いが止まらなかった。

 だって前作がああいう悲劇的な終わり方だったから、何とか精神のバランスを取らないことには僕は死んでしまっていたと思う(笑)。大げさじゃなく、創作というのは自分を危うくする危険な行為だ。たとえば『僕の光輝く世界』の犯人のように小説のネタに詰まって殺人に走るやつがいたって不思議じゃない。

 まあ、めったにないことだけどね。